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でも、来葉は知らなかったんだ。
毎日、両親が罵声と共に、部屋越しに「来葉をアメリカの病院に連れて行って治療をさせる」という話をしていることに。
そして、それが明日ということに。
私は手紙を封筒にしまい、壁にもたれかけさせていた来葉をなんとかソファーまで運んでから、私は病室をあとにした。
来葉は小さい頃から演劇の学校に通っていて、この頃から演劇の才能は輝いていた。
両親もそんな来葉には目をかけており、アメリカの病院に連れていくことはすんなりと決まっていた。
次の日、アメリカの病院に行くことを聞いた来葉はぽかんとしていたけれど、特に拒否する気もなかったのか大人しくしていた。
飛行機に乗ってアメリカへ飛び立った来葉を、私は空港で見ているだけだったけれど、その後、無事手術が成功して元気になったことを知った。
来葉はその後、そのままアメリカに残り、演技の学校へ通うことになった。
手紙は、私がこっそりポストに入れておいた。
でも、それ以来来葉も忙しくて、文通は途絶えた。文通相手からの手紙は届いていたけれど、あの時期は色々あって、結局忘れてしまっていた。
『そっか。会えたんだ…』
「それでね、やっとお礼が言えたの。」
そう言う来葉は本当に嬉しそうな表情を浮かべていて、私はさっきまでの不貞腐れていた気分が吹き飛んだ気がした。
でも、私は言う。
『でもね、周りには気をつけないとだめだよ…ただでさえ来葉は人気者なんだから。』
その言葉に、来葉ははっとして顔を曇らせた。
人気者の宿命だ。
めちゃくちゃ可愛い来葉には、ガチ恋勢なるものがいる。ファンもいる。見つかったら、ただの友達だったとしてもスキャンダルだ。
そうしたら、困るのは来葉だけじゃなく、イチもだ。
「で、でも!ちゃんと変装してたし!」
『うん。来葉がちゃんとしてるってことは私が1番知ってるよ。だからこそ、これからもイチと仲良くするんなら気を抜かないようにねって…』
そこまで言って、私ははっとした。
私の悪い所が出てる。つい過保護に接して……
『ごめん、お節介やきすぎた…』
「ううん!全然大丈夫だよお姉ちゃん!」
にこにこと笑う来葉。
ああ、やっぱり来葉はいい子だなぁ。
よし、いいこと思いついた。
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梅餅(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます!メチャ嬉しいです!!更新頑張ります! (2019年12月19日 20時) (レス) id: d60510a5f6 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - この作品好きです!続き楽しみに待ってます! (2019年12月19日 17時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
梅餅(プロフ) - 黒雪 冬華さん» 黒雪さん!お久しぶりです!全然考えずに書いてたんですが、このままシスコンで押してく路線に変更します!ありがとうございます笑 (2019年10月8日 20時) (レス) id: d60510a5f6 (このIDを非表示/違反報告)
黒雪 冬華(プロフ) - お久しぶりです!やっぱ面白いです。妹さん、シスコンと見た←安っぽい推理である (2019年10月8日 17時) (レス) id: 4eb5adcd65 (このIDを非表示/違反報告)
梅餅(プロフ) - かのさん» コメントありがとうございます!ちょこちょこ見てるんですけどほんと面白いんですよね笑ライブ楽しんできます!ありがとうございます! (2019年6月22日 10時) (レス) id: d60510a5f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅餅 | 作成日時:2019年6月13日 18時