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15話 ページ18

この何年もの間、何度もここに連れて来られていたのに、私は何も見ていなかった。


見ようとしていなかった。



だから仁王くんの存在にも気付かなかった。



いつから仁王くんは見ていたのか知らないけど、口ぶりからして多分ここでずっと見られていたのだろう。





(あ……お礼、言わなきゃ)




まだ言っていなかったことを思い出して、急いで顔を隣に向ける。



すると彼は、じっと私のことを見つめていた。





その瞳は穏やかで、心がこもったものだった。




仁「やっと言えたな。助けてって。助けを求めるのは、悪いことじゃなかよ。


勇気ある行動じゃ」




『……』





仁「よくできました」




仁王くんは、偉いのう、と言って私の頭を撫でる。




いつの間にか自分以外全員敵だと思っていたが、こんなに近いところに味方はいたらしい。





『……ありがとう、仁王くん。



王子様みたいだった』




仁「そうか?……って、泣いとるんか。涙、ぼろぼろ出よる」





『っ、安心したら、ごめん』





仁「気にせんでええよ。

あれだけいじめられても泣かなかったお前が、
こうして俺の前で泣いてくれて嬉しいぜよ」






この人に助けを求めて良かった。



諦めないで良かった。




私は一人じゃなかった。


もう、いじめられずに済むんだ。ここまで我慢してきて良かった。




死なないで良かった。


 



助けてくれて、ありがとう。




『……っ、あり、がとう……』




長い間溜めこんでいた涙は、次々にこぼれ落ちて止まらない。





涙交じりのその声に、仁王くんは息を漏らして笑う。





そして泣き止むまで、何も言わずにずっと隣にいてくれた。

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ユッキー(プロフ) - megumiさん» 最高に嬉しいです!ありがとうございます!励みになります(*^^*) (2019年5月27日 1時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - お話も興味深いですし、描写も深くて素敵です(*'ω'*)更新、楽しみにしています! (2019年5月27日 1時) (レス) id: 04e98a2c19 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - 白銀水龍さん» ありがとうございます!そんなお言葉を頂けるなんて嬉しい限りです(*^^)v頑張りたいと思います! (2019年5月21日 18時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
白銀水龍(プロフ) - 面白い!これからも更新頑張ってください! (2019年5月21日 18時) (レス) id: 01408c4e23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年5月20日 0時

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