3.華が似合う人 ページ3
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次の日になっても、夏祭りで出会ったあの人のことが頭から離れない。ぼーっとしながらトーストをかじる。味がしない。
気付いたときには時計の針は八時を回っていて、俺は急いで家を飛び出した。
なんとなく。本当になんとなく、『恋は盲目』という言葉が右からダッシュしていった。
(恋は盲目? いやいや)
あり得ない、と否定しながらもその可能性を感じてしまう。確かに俺は、あの人の優しい瞳に惹かれたんだ。
勿論遅刻した俺は、先生にこっぴどく叱られた。
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中休み。クラスが同じなかむと駄弁るのがテンプレートだ。俺がぼーっとしていたからか、なかむからてとてとと近寄ってきた。
「きんときが遅刻するなんてめずらしいね。ぼーっとしてるし。なんかあった?」
「なかむ」
なかむが「んー?」と返事をする。なかむの瞳をじっと見つめて、俺は言った。
「恋した」
「なるほど恋ね……。えぇ!?」
なかむの大きな声にクラス中の視線が集まる。気まずそうに頭を下げる姿が面白い。
容疑者を問い詰める刑事のような顔つきをしたなかむが言う。
「俺の知ってる人? え、誰?」
「いや……。知らない、ちょっと会話しただけで」
「一目惚れってやつ?」
なかむの問いに頷く。うーん、と彼は唸った。
「じゃあ、見た目とかは?」
「肌が白くて、目が黒。髪は黒でふわふわだった。あと、見た目じゃないんだけど……。りく君っていう弟がいるみたい」
「……あっ!」
なかむはわざとらしくぽん、と手を叩く。
「俺、その子知ってるかも!」
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うい(プロフ) - あずきさん» お褒めのコメント嬉しいです。更新頑張るので、是非また来てくださいね。 (2022年9月23日 13時) (レス) id: a7df37f5cd (このIDを非表示/違反報告)
あずき - 面白いです~!!応援してますっ!! (2022年9月23日 13時) (レス) @page1 id: fed7a00a2d (このIDを非表示/違反報告)
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