脱走 ページ4
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太宰さん発見からしばらく経った。
勿論報告することはしない。
したところで捕まらん。
放っとこ放っとこ。
太宰さんが抜けても変わらず任務や業務はあるわけで。
最近組むことが多くなった芥川さんの機嫌が最悪で困っている。
中也さんも太宰さん抜けた上に幹部に昇格したのに眉間の皺が取れない。
体術訓練が怖いぽよ……。
半年もすれば幹部行方不明のことはうやむやになって、また元通りのマフィアライフに戻っていた。
相変わらずうちの組織は五人で回していて、なかなか大変だがそこそこの成績を出している。
マフィアでそこそこの成績とはつまりそういうことなので察してほしい。
ちなみにまだ直で殺してません。
ただの足手まとい。
気づけば、石川さんとは出会ってからもうすぐ一年だ。
いつの間にか心を開いてしまい、周りから見てもベタベタに慕っていた自覚はある。
だから、これから起こる出来事は、結構堪えた。
今からその話をしよう。
中二に進級したばかりの学校帰り、電話があった。
石川さんからだ。
「はい、安部です」
「あ、Aちゃん!大至急戻ってこれる?事情はまた話すから、とりあえず執務室まで来て」
「え、あの」
また、返事も聞かずに電話が切れた。
どいつもこいつも……。
焦っているというよりは手一杯といったような感じの石川さんの声。
太宰さんでも見つかったのかと最短で本部ビルに向かった。
ビルの前まで来ると、何やら入り口が騒がしい。
小走りで近寄ると、そこでは黒蜥蜴が何かの集団と戦闘に入っていた。
だが、様子がおかしい。
黒蜥蜴の方が外側にいる。
呼び出しというのは、黒蜥蜴が裏切ったとかそういうことか?
何もわからないままそっと近づき、黒蜥蜴の内の一人を捕まえて陰に引きずり込む。
「何する……安部さん!?」
名前もわからぬ黒服の方に問う。
「何があったんですか?」
すると彼は一瞬言葉に詰まってから説明してくれた。
「それが……Qが、座敷牢から脱走しまして」
「脱走?如何やって?」
「判りませんが、もう既に多数の構成員が呪いに」
やっと事態の大きさが判り、同時に石川さんの電話を思い出した。
謝罪と感謝を述べ、そのまま黒蜥蜴の戦闘地帯の方へ走る。
「通ります!」
戦闘員たちが驚いたような顔をするのにも気にせず突っ切り、無法地帯と化したエントランスから階段を駆け上る。
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七海@返事・更新頗る滞ります(プロフ) - …え、ひゃ…。のーとさんの新作……嬉しいです…!!(通知来た瞬間、微笑みました)実は前作から拝読させて頂いて居りました。…更新、正座待機で待って居ります。頑張って下さい…! (2020年4月9日 18時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のーと。 | 作成日時:2020年4月9日 18時