探せ ページ2
.
説教を受けたその日に早くも追いだされた私は、翌日から元気に学校に通っていた。
反省したとみなされたらしい。
わからんけどね。
面倒臭かっただけかも。
学校では、明らかに重症化してガチガチに固定された右肘とコンクリートに打ち付けて出来た顔の擦り傷に特にツッコミも受けず、普通に接してもらった。
少しは心配してほしいなあと若干の寂しさもありつつ二限の生物の授業中。
生物の先生が発する入眠の波長でクラスの三分の一が落ちている。
私は一昨日と昨日で十分に睡眠をとったのでそれほど眠くはなかった。
しかし静かすぎるクラスの空気に負け、私も元気に眠りにつこうとしていたその時、けたたましい音が耳をつんざいた。
先生や寝ていた生徒までが何事かと音の方へ視線を集める。
デフォルトの電話の音が、私のリュックから聞こえていた。
リュックを開ければ、黒い携帯が光っている。
仕事用だ。
思わず無表情になって先生に尋ねる。
「出てもよろしいですか」
「……よろしい」
あっさり許可を得、廊下に出る。
多分やる気ないんだと思うんだわあの先公。
「……安部です」
「太宰さんが消えた。探せ」
其れだけ聞こえたかと思うと、通話は切れた。
「……えー」
芥川さんが電話切るの雑なのは皆さんご存知の通りだが、今回は特に酷い。
無視するわけにもいかないので右肘をさすりながら教室へ戻る。
先生が視線だけ此方に向けて云ってきた。
「何だって?」
「私の、その、恩師が……危篤、みたいな」
「帰りなさい」
「はい」
大嘘をついてしまい心苦しいし別にありがたくもないが帰らせてもらう。
「探せって云われてもな〜」
駅の改札前で立ち止まり、意味も無く後頭部を抑える。
よくある、困っている人の仕草だ。
現に私は今とても困っている。
予感はしてた。
太宰さんがポートマフィアを抜けることはもともと知っていた。
時期は知らなかったけど坂口さんも織田作さんもいなくなって、もうすぐかな、と思った。
多分マフィアとしても形式上は彼を追わないと何も知らない構成員に混乱を招いてしまうのだと思う。
だって首領とか絶対予想の範疇だと思ってるだろ。
あの人性格悪いし。
ただ、芥川さんは本当に必死そうだった。
ちょっと可哀想だなと思いつつ、とりあえず電車に乗り込んだ。
20人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
七海@返事・更新頗る滞ります(プロフ) - …え、ひゃ…。のーとさんの新作……嬉しいです…!!(通知来た瞬間、微笑みました)実は前作から拝読させて頂いて居りました。…更新、正座待機で待って居ります。頑張って下さい…! (2020年4月9日 18時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:のーと。 | 作成日時:2020年4月9日 18時