マフィア入社試験(？) ページ7
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最初は、安部の異能が太宰と同じ、異能を無効化するだけのものだと思っていた。
だが、安部の異能のことを首領に報告したとき、首領はこう云った。
「何か違和感があるね。……少し調べてみようか」
安部の異能の話に、首領は何か感じたようだ。
その後何故か首領は糞鯖を呼び出した。
曰く、
「太宰君も興味があるんじゃないかと思った」
らしい。
なにも参加させなくても。
そもそも、昨日まで一般人だった奴のために太宰を駆り出さなくていいんじゃねェのか。
そんなに頼りねェか、俺。
話が逸れた。
「中也、明後日任務は？」
「任務はねェが暇でもねェぞ」
「わかった。空いてるのね」
「手前！」
……糞。
矢っ張り此奴と関わると苛々して来やがる。
その後、ほぼ(全部)太宰の独断で作戦が立てられた。
任務と偽って安部の異能を確かめるというものだ。
安部の反応からして彼奴が自分の異能を全て理解しているとは云い難い。
問題は敵の役を誰にやらせるか、だった。
黒蜥蜴は既に顔を合わせたし、黒服だと頼りない。
癪だが太宰も同じことを考えていたようで。
「そうだ、
名案だ、と口の端を吊り上げる太宰に、俺は寒気に近いものを感じた。
太宰の数少ない友人の一人、石川淳は、マフィア内でもそこそこの位置でやっている異能力者だ。
幹部である太宰に、重要な機密文書なんかの混ざった書類を押し付けられ、それをお得意の苦笑いで引き受けている(首領もなんだかんだ目を瞑っている)
推しに弱いのだろう。
そして、それにつけこんだ太宰がまた膨大な量の書類を押し付ける、というループがしばらく前から確立している。
太宰を嫌っていてもおかしくはないが、まあそこは一応「友人」らしい。
結局、何が言いたいかと言うと、石川は断じて暇ではないということだ。
少なくとも太宰よりは。
そうこうしているうちに石川が来た。
前置も無しに太宰が作戦の説明をする。
「治くん、ぼくすごく忙しいんだよ」
そんな皮肉を聞き流し、太宰は言う。
「彼女のことを知っておいて損はない。孰れ近い存在になるだろうからね」
石川はしばらく考えるような素振りを見せた。
「…じゃあさ」
そして笑みを深め、言う。
「治くんが今溜まってる仕事と、向こう一週間分の書類、ちゃんと遣るならいいよ」
石川はこの役が自分でなければならないことを理解していた。
なかなかの策士らしい。
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作者名：のーと。 | 作成日時：2018年10月1日 22時
