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私にできること ページ28

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そういえば、この異能力を身に着けるよう指示したのは首領だったな、と思いながらもう片方の手袋も外す。


首領と太宰さんは、こうなることをわかっていたんじゃないか。

そう思うと、ちょっと恨めしかったが、この際そんなこと考えたって無駄なので、振り払う。


どうせなら汚辱も混ぜてみるか。

そう考えれば、あのラヴクラフトも件も訓練だったのではないかなんて思えてきた。



「汝、陰鬱なる汚濁の許容よ」


息を吸い込み、綺麗だなあなんて思いながら横浜の景色を目に焼き付ける。


「更めて我を目覚ますことなかれ」



久しぶりに感じるこの感覚。


いや、前とは少し違う。


ただひたすらに、白鯨の一点だけに力をかけ続ける。

押し戻すように、叩き落すように。




鯨がへこむ。

止まらない。

鯨が墜ちていく。

止まらない。

自分の叫びが遠くから聞こえる。

止まらない。


この前より消費が早い。

それでも止まらない。



やめてしまいたい、なんて頭が思っても、それは体の動きにかき消される。


太宰さんはきっと来ない。

失礼だけど首領なんて論外だ。


まだ辛うじて働く頭で思った。

皆あんなに回りくどかったのは、きっと、いや絶対このことだったんだ。

らしくもなく遠慮なんかして。




首領の遠慮なんて考えたらくす、と笑えた。

心の中で、だけど。


これから死ぬ、ってのに、無駄な考えばかり浮かんだ。



その時、かけていた力がふっと空回りするような感覚があった。


我に返れば、白鯨は海に墜ちたあとだった。


盛大に上がった水しぶきを派手に被る。



当然、力尽きた私に耐えられるはずもなく、そのまま海に滑り落ちた。




吊り橋越しの海岸に、黒い外套が見えた







____ような気がした。

或る会話達→←若しも



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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年3月28日 9時

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