宿敵 ページ20
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白鯨に潜入した後、気配に敏感な芥川さんに見つからないよう、彼の歩いている数階下の廊下を歩いてついていった。
不自然なくらい構成員がいない白鯨の中をうろうろしていると、芥川さんが何かを見つけたようだ。
いきなり歩みを止めた。
視線の先をたどると、疾走している中島さんの姿が。
芥川さんはゆっくりとその前に立ちはだかる。
中島さんは立ち止まり、芥川さんを睨んだ。
「お前……」
「見つけたぞ人虎…!」
芥川さんが目をかっぴらいて叫ぶのを押し殺したように言う。
「…芥川ァァァァァ!!!!」
そのまま壮絶なバトルが繰り広げられる。
やばい。
その一言に尽きる。
「曲芸の腕はあげたようだな、人虎」
「何をしに来た。芥川」
「貴様を殺しに…!」
その台詞を凄い形相で言うものだから、こちらにまで殺気が伝わってきた。
しかし、人虎もとい中島さんは動じない。
「今がどんなときかわかっているはずだ。僕たちの居場所がなくなるかもしれないんだぞ!」
中島さんは芥川さんを睨み返し、言った。
「僕にはお前が微塵も理解できない」
「理解を求めた覚えはない」
そこで、中島さんに着信が入ったようだった。
そうだ、組合の団長を止めるんだっけ。
「……わかりました」
中島さんはインカムに手を添え、四つん這いだったのから立ち上がった。
「芥川。このインカムは、太宰さんとつながってる」
芥川さんに動揺の色が見えた。
「…話があるそうだ」
その言葉に芥川さんが一歩踏み出すと同時に、中島さんがインカムを力いっぱい投げた。
そう、私の方に。
白鯨の中は暗いからこちらはそんなに見えていないはずだし、見つかってはいないと思うのだが、芥川さんが来たらまずい。
必死にその場から逃げた。
「太宰さァァァん!!!」
そう叫びながら芥川さんがフェンスを乗り越え、インカムを掴み取った。
そして羅生門で壁にぶら下がる。
危ない、見つかるところだった。
その間に中島さんは走って行ってしまった。
「太宰さん!」
微かに、ツー、ツー、と通話の切れた音がした。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年3月28日 9時