ドーナツ ページ10
「ポートマフィアに入る気はないかね?」
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そんなことを言われて早4年半。その空白の期間に何があったかは今度回想するとして、結局ポートマフィアに入ってしまった現在16歳、高校一年生の私(なお、実年齢は27歳の模様)は下校中である。
12歳以下に優しいポートマフィアの首領様が私がギリギリ12歳の時に高校までの教育を保証してくれた。
要するに休日出勤である。
話を戻すと、今日は土曜日。
土曜日の下校時には河川敷でファ○チキを食べるという習慣がある私は今日もその河川敷に来ていた。
今回は欲張ってドーナツも買ってやった。
太る?言うな。
今日も最高の眺め。
最高の座り心地。
最高の味。
そして、急に倒れこんだり叫びだしたり「僕は死なないぞ」だか何だか言ったりしている個性的な前髪のお兄さん。
ここで自慢をはさむと、私は耳がいい。
聴力検査では一つも落としたことがない。
だが、今「次に通りかかったやつを襲って、そいつから金品を奪ってやる」などと聞こえたのは幻聴だ。
おっと〜?
さっきの前髪お兄さんがこちらに向かってきているという幻覚が見えますね。
過労かな?
「お、おおおおい!そ、そこののおおんなのこ!きんぺぴん、たべもの、ぜんぶぶおおいてかかなあいと!おおそっちゃうううよ!」
そう言ってビシッと私を指さす前髪お兄さん。
知ってるよ中島さんだよね。
東西ヘタレって言われてたよ本当だったんだね。
てかなんて言ってんのかわかんねえよ。
金品のこときんぺぴんって言ったの私ばっちり聞いてたからね。
まあ、ここで見捨てるほど私も薄情じゃない。
ドーナツを差し出すと、中島さんは目をぱちくりさせているので、仕方なく自分の横に置いておく。
ようやく理解したようで私の隣に座ると、パクパクと食べ始めた。
ものすごい速さで食べてあっという間に完食。
いくらか足しにはなったようだが、まだ足りないようだ。
「ありがとうございました。それから、ごめんなさい。あまりに空腹で…本っ当にすみませ「ぐううう」…」
「お腹が空いてるなら、あの人を引き上げて頼んでみるといいですよ」
私が指さしたのは川を流れていく2本の足。
我らが太宰さんである。
4年前に会ったきりだ。
向こうが気付いてるかは知らないが私は街で何度も太宰さんを見かけている。
よくナンパしてるよね。
中島さんは川を流れていく2本の足を見た途端、川に飛び込んでいった。
私はもちろん面倒ごとに巻き込まれないうちに退散した。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年2月6日 18時