番外編?:織田作之助という人 ページ46
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「それより、この子の前でそんな話、しても大丈夫なのか」
「ああ、それなら問題ない。なんせ、この子もポートマフィアだからね」
すると、珍しく織田作が少しだが目を見開いた。
「この子が太宰たちの言っていた…」
「そ。蛞蝓の部下」
私が安部君に目を向けると、彼女は動きを止めた。
完全に警戒している。
別にこんなところで無意味に弾圧やら虐待やらをするつもりはさらさら無いのに。
織田作はしばらく彼女を見つめた後、口を開いた。
「俺は織田作之助。ポートマフィアの最下級構成員だ」
「せ、先輩でしたか。えっと、安部Aといいます。マフィアに入ってから来月でちょうど半年になります。お、主に中原さんの下で働いています」
語尾に近づくにつれ声がどんどん小さくなっていく。
「半年足らずで中原さんの直属の部下か。異能持ちか?」
「あ、はい…」
織田作はそれ以上を聞くことはなかった。
「人を殺さない者同士仲良くしたらどうだい?」
「え……いえ、そんな、仲良く……ええ……」
そう言ってさらに体を縮こまらせる安部君。
「あ、あの、私はこれで失礼します」
代金を払い、そそくさと出ていく安部君の後姿を見ながら織田作は呟く。
「礼儀正しい子だな。マフィアに向かない子の典型だ」
「なんたって元一般人だからね。中也は無理やり連れてきたのさ」
「無理やり」の部分を強調して言う。
「あ、安部君学校の宿題を置いて行っちゃったみたいだねえ」
「学校に通っているのか?」
「当たり前じゃないか。表向きは、光に生きる一般人だからね」
「…綺麗な字を書くな」
「そうだねえ。あのチビとは大違いだ」
作戦立案の書類訂正のミミズみたいな文字が3ヶ月くらい前に急に綺麗になったのはあの子の仕業か。
「ねえ織田作、私あの子部下に入れたい」
「聞いてみればいいんじゃないか?」
「蛞蝓がぎゃんぎゃんうるさいからな〜」
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年2月6日 18時