番外編?:織田作之助という人 ページ45
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それは、中一の定期テスト最終日の帰り、家に誰もいないため昼食をと寄った一軒の洋食屋での出会い。
「えっと、カレー甘めで」
「はいよ」
甘口で悪かったな辛いの苦手なんだよ。
暇つぶしに宿題でもやってやるか、とテストが終了するや否や大量に出された宿題の中から国語を引っ張り出した。
しばらくすると、一人男の人が入ってきた。
私と椅子を一つ挟んだ左側にその人は座った。
向こうが会釈してきたのでこちらも返す。
偉いぞコミュ障予備軍(既に手遅れ)
「親爺さん、いつもの」
「はいよ。お嬢ちゃん、どうぞ」
「ありがとうございます」
宿題を片付け、早速カレーに取り掛かる。
「カレーの味はどうだい?」
「…いつも通りだ。子供たちの様子はどうだ」
「いつも通りだよ。みんな二階にいるから顔出してやって」
そんな会話を聞き流しながら黙々と食べていると、男の人が立ち上がったのがわかる。
えっ、食べるの早。
男の人が出ていって間もなく、上から子供のものらしき声と地鳴り(?)が聞こえてくる。
「元気だねえ」
「……太宰幹部?!」
「ん?ああ、中也んとこの安部君か。何でここにいるの?」
「ち、昼食を…」
太宰幹部はふうん、とそれだけ言って私の隣に座った。
…隣に座った。
太宰幹部が隣に座った、それだけで私の心の中はもう大荒れである。
今の太宰さんからは想像出来ない、隣に座るだけで、少し話すだけで精神的に殺される感じ。
「辛っ、辛いよおじさん。これ隠し味に溶岩でも入ってるの?」
「織田作ちゃんはいつもそれ食べてるよ?」
ああ、救世主よ、と思っていると、丁度あの男の人が帰ってきた。
「ああ、子供たちはどうだった?」
「いつも通りだ」
「二年前の龍頭抗争で、親を失くした子供たちかい。決して殺さず、出世に興味はなく、孤児を養うマフィア、織田作之助。変わってるねえ。ポートマフィアの中で一番変わってるよ」
「お前ほどじゃない」
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年2月6日 18時