カルマトランジット ページ38
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敦君が誘拐された事件で、関わったトラックの所有者である「カルマトランジット」付近で待機していた。
「…了解しました。これから潜入します」
〈様子は?〉
「湖の底みたいに静かです。人の気配が全くなく………!まさか…」
急いで会社の事務所の扉を開けると、そこには無惨な光景が広がっていた。
「っ、やられた…!先手を打たれました!」
〈おい、どうした!〉
「口封じに…全員、殺されてます」
〈…芥川だ。〉
「ん?谷崎さんじゃないですか」
「っ!」
後ろを振り返ると、Aちゃんがいた。
国木田さんからマフィアだったという話は聞いている。
それにしても全く気配がしなかった。
〈どうした!谷崎!〉
「ポートマフィアがいます。……Aちゃんです」
〈なんだと?谷崎、逃げろ。そいつは遠距離異能の能力者だ。〉
「……派手にやったもんですね。酷いわこりゃ」
国木田さんに電話越しでそう言われるが、Aちゃんから全く殺気が感じられないのはなぜだろう。
「これ…Aちゃんがやったの…?」
「え?」
Aちゃんはきょとんとしたあと、大きく息をついた。
「そんなわけないじゃないですか。私の今の異能力は一度にこんなに大量殺人できるものじゃないし、なにより私あんまり人殺したくないので」
「じゃあ、なんでここに…」
「確認して来いって言われたんです。探偵社や軍警がいたら殺せって」
「!」
Aちゃんの言葉を聞き、一歩、二歩と後ずさる。
〈谷崎!今救援に向かう。変な真似はするなよ。殺されるぞ〉
「国木田さん、全部聞こえてますよー。言ったでしょうが私人殺したくないの。殺した人に大事な人やら待ってる人やらがいたら不憫でしょうが」
そう言ってAちゃんがこちらを向き、ニコッと笑う。
「谷崎さんには妹さんがいるんでしょ?」
そして、電話を取り出すAちゃん。
「あ、もしもし?誰もいませんでしたよ」
___なんかパトカーの音聞こえてきたけど。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年2月6日 18時