42話 ページ43
私の異常さに気付いたのか、Sansさんは腕をぐっと掴んで焦ったようにしゃべりだす。
「っオイ、おばさんの所へ急ぐんだろ、早く行くぞ」
「……良いんです……良い、ん、ですよ……どうせ、私が先に進もうとしない限り、どのエリアの時間も進まないのだから」
「…ッ!?」
私が今、どんな顔を浮かべているのかはしらない。知らないが……Sansさんは確実に、私の顔をみて、ぞッとしたような表情を浮かべた……そんな顔も、できるのね。
捕まれた腕を軽く振り払って、左側の裏路地をひょいと覗いた。後ろからSansさんの足音は聞こえない、きっと呆然とでもしてるんだろう。情けないこと、時間軸の流れを把握しているイレギュラーな存在なら、同じ不測の事態には見事に対応してみなさいよね
薄暗い裏路地……近づく程に濃くなるヤニの匂いに思わず口角がニタリと引きあがる。煙の元は、猫のモンスター……従業員の様だ。きっとこのホテルの……否、ホテルにしては服装が軽いような…?
取り敢えず…大方、休憩中なのだろうけど
「あの、」
ジャリ、と音を鳴らして歩み寄る。従業員はさすがに驚いたらしい、びくりと大きく飛び上がった。___まるで、背後に胡瓜を置かれたときの猫みたい。
「すッ…すみませんボス!!……じゃ、ない?…はッ……っぶね〜…」
「…なんかすみません」
私の姿を再確認して、安堵の表情を浮かべている彼…そのボスが誰かは知らないけど、見つかったらまずかったのかもしれないな……例えば……そう、やっぱりサボりだったとか。
「……急に、すみません。私、タバコのにおいにつられちゃって……不躾なお願いとは存じますが、よろしければ一本でいいのでお恵み頂いてもよろしいでしょうか……勿論、お金払いますよ」
ゆらゆらと彼の手元で燻っているタバコの煙が尾行を擽る。副流煙を肺一杯に吸い込んで、ぼんやりする思考回路を愉しんだ。
目の前の彼は、一瞬考える様にタバコを手に持ってから……私をじろりと眺めて口を開いた。
「あ〜……いいよ、オレがさっき拾ったヤツやるよ。一箱まるまる入ってるヤツ、見たことない銘柄だったけどいいなら」
「ぇ…ッい、いいんですか!?そんあ…一箱はちょっと申し訳ないです…」
「いいって、オレ昨日カートン買ったばっかだしよ」
……なんて、優しい人なのだろう。
最後、ほら、いったいった、と追い払うように手を振られた。
彼の御厚意に甘えておくことに、した。
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いちご飴☆(プロフ) - ダジャレが好きな主人公ですか・・・私もダジャレ大好きです・・・。あ、すっごく面白い作品ですね!作者さんのペースで頑張ってください、応援します! (2022年2月18日 23時) (レス) id: 5f094832cd (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - らぁーゆさん» 今回ばかりは流石に予想していなかったので正直戸惑いましたがなんとか投稿させて頂きました。お待たせしました (2022年2月5日 1時) (レス) @page19 id: a53994f60f (このIDを非表示/違反報告)
らぁーゆ(プロフ) - うわぁぁ!とても最難なことが起こりましたね💦深夜まで待っております! (2022年2月4日 20時) (レス) @page17 id: ebbeaa48a3 (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - うまさん» そう想っていただけて幸いです。引き続き楽しんで頂けるよう更新の方頑張って行きたいと思います故…どうぞよろしく御願いします (2022年2月4日 17時) (レス) id: a53994f60f (このIDを非表示/違反報告)
うま - この作品すきなので更新頑張ってくださいっ! (2022年2月3日 20時) (レス) @page16 id: 0cf6b27ac1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:病蛟 | 作成日時:2022年1月16日 15時