19話 ページ20
燃え盛る炎の音が私たちの間に木霊している。私の視線を受けて、Torielさんは視線をキツクした。
「違う……違うわ。貴方が今此処で私に対して行うことはMERCYでもMERCYじゃない。意味をはき違えてはいけないわ。私を“見逃す”のではない、貴方が“逃げ”るのよ!寧ろ、私が貴方を見逃す立場にある事を…理解しなさい!」
炎の強さが、彼女の怒りと相まって勢いを増していく。肺をも火傷してしまうかの様な空気の熱さに、げほりと小さく咳き込んだ。
「貴方が此処で取るべき行動は、私から逃げるか、私と戦う事だけ」
「……いいえ、こ、こんな…私にも、選択権はある筈です。こんな…イレギュラーな私でも、そのくらいの選択権は有ります、きっと……だから、MERCY、です。」
なんて言ったって譲る気はない。
逃げる、それは一種の戦闘スタイルだ。それは知ってる。
私だって……会社から逃げ出した。現実から逃げ出してきた。逃げ出して来たから、今私は此処に居るんだ。コノ、非現実に。
「…言ってもわからないようね……」
彼女は一度、酷く苦しそうな顔をして掌を握りしめた…かと思えば確実に、私を狙って火の玉が放たれてくる。
火の玉はあらゆる角度から襲ってくるけど、冷静に見てれば……避けられない程では、無いんだ。
「これは貴方を守るためなの……」
分かってる、だって顔が、そう物語っているもの。
態度がとても余所余所しい、私と目を合わせようとしてくれない。きっと、Torielさんは私と戦っている中で、葛藤しているんだ
出て行きたいという思いを尊重するべきか、守るためだとここに閉じ込めておくべきか。
私は、出ていきたいと思ってはいない…けどさ。
攻撃が一通り止む、少し火の玉が掠りそうになった、まだ大丈夫。油断はしてはいけない。
…MERCY、
「……Torielさん、一度、落ち着きましょう?」
「…………」
…Torielさんは、聞く耳を持たないようだった。
やっぱり、逃げるしか道はないのか……?
でも、ふとした考えが頭をよぎる。
……もし、ここで逃げたら、彼女は安心できるのだろうか。
また何時私が逃げ出すかわからない状態で、彼女は安心して生活できるのだろうか。
……否、安心できない、できるわけがない。
そしたらやっぱり……
「Torielさんの意見はよくわかります。……でも、私、出ていくッて言ってないです。heh……だから、MERCYです。」
「ッ……!!」
私は今どんな顔をしているか……
Torielさんの体が大きく震えた。
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いちご飴☆(プロフ) - ダジャレが好きな主人公ですか・・・私もダジャレ大好きです・・・。あ、すっごく面白い作品ですね!作者さんのペースで頑張ってください、応援します! (2022年2月18日 23時) (レス) id: 5f094832cd (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - らぁーゆさん» 今回ばかりは流石に予想していなかったので正直戸惑いましたがなんとか投稿させて頂きました。お待たせしました (2022年2月5日 1時) (レス) @page19 id: a53994f60f (このIDを非表示/違反報告)
らぁーゆ(プロフ) - うわぁぁ!とても最難なことが起こりましたね💦深夜まで待っております! (2022年2月4日 20時) (レス) @page17 id: ebbeaa48a3 (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - うまさん» そう想っていただけて幸いです。引き続き楽しんで頂けるよう更新の方頑張って行きたいと思います故…どうぞよろしく御願いします (2022年2月4日 17時) (レス) id: a53994f60f (このIDを非表示/違反報告)
うま - この作品すきなので更新頑張ってくださいっ! (2022年2月3日 20時) (レス) @page16 id: 0cf6b27ac1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:病蛟 | 作成日時:2022年1月16日 15時