角恋慕 [チームTAKOS] ページ23
- アブ
*
アブは昔から、女の子に対してだけ優しくて、紳士だった。 彼の仲間内にはいつも美人な子がいたし、分け隔てなく親切な姿勢がモテ具合にさらに拍車を駆けたんだと思う。
「…別に、私には関係ないけどね」
バッサリ切った髪の襟足をつんつんといじりながら私は机に突っ伏した。
アブとは長い間友人関係にあったが、もう今では他人。というか、顔見知り。
中学までほとんど習慣に近かった二人での登校、下校もどこへやら、美人な先輩と腕を組んで校門をくぐるアブである。腹立つ。
アブはスタイル、ルックスは申し分ない。 …でも私は知ってる。彼が重度のナルシストで、自分が一番好きってことくらい。
女の子の細い腰に腕を回して「かわいい」って囁くのも、校内でキスするのも、全て裏を返せば自分への自身からだ。
脳内でドヤ顔をキメるアブに何度もパンチをくらわせながら、私は問う。
「私のこと好きだって言ったじゃない！」
*
というのも、それを言われたのは小学生のころである。
鼻水垂れ坊主だったアブと、ガキ大将のポジションにいた私は、よく一緒に遊んでいた。
女の子らしくしなさいとクシを入れられた長い髪を二つに纏め、泣き虫なアブの手を引いて歩く。
「Aちゃんだけ居てくれればいい」なんて、か細い泣きべそ声で言うんだ。
それでも、少しの年を重ねればアブはどんどん背が伸びて、学生服なんて着るころには、何人もの女の子が彼に告白した。 断ったのか、その中の何人かと付き合ったのか、私とアブの距離はゆっくりと離れて行った――――――。
ほわわわん……と昔の淡い一時に思いを馳せる。
気が付けば人影も疎ら。私はスクールバックを肩にひっさげて教室を出る。
下駄箱でローファーから踵を履き潰したスニーカーに履き替えれば、甘〜い香水の香りとともに特徴のあるねばっとした声色が近づいて来た。
俯いて、やり過ごそうと息を止めた。
「今日はどこ行こっかぁ？」
「ん〜、じゃっ、ホテル行こ！」
「やだぁ！ 一昨日も一緒だったじゃん！」
視線を横にずらせば、ネイルでピンクに光る爪が、アブの顎を撫でていた。
ゆるやかにウェーブのかかった茶髪は、明らかに前見た黒髪メガネの女の子とタイプが違った。
一目でわかる浮気するなっての。
私はガゴン！と派手な音を立ててロッカーを閉め、二人の横を通り過ぎた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 547人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サラ - うおおおキヨさんんんん!!私のリクでしたか！ありがとうございます！もうすぐで完結しちゃうんですね…ちょっと悲しいです(´；ω；`) (2016年5月14日 22時) (
レス) id: 72c8aad68f (このIDを非表示/違反報告)
はちか(プロフ) - サラさん» もちろんそうです！！お待たせしました、すみません（；；） (2016年5月12日 23時) (レス) id: 7bd8392448 (このIDを非表示/違反報告)
サラ - はちかさん» ふわぁぁもしかして私のリクでしょうか、優しく頭を撫でてくれって！例え違っても最高です！私頭撫でられるの大好きなので！続き待ってます！(*^-^*) (2016年5月7日 22時) (レス) id: 72c8aad68f (このIDを非表示/違反報告)
サラ - はちかさん» はい！待ってます♪(○´∀｀○) (2016年4月21日 21時) (レス) id: 72c8aad68f (このIDを非表示/違反報告)
はちか(プロフ) - ソース屋さん» はい！ぜひ！（＾O＾） (2016年4月11日 21時) (レス) id: 7bd8392448 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はちか | 作成日時：2014年11月21日 23時
