きっかけのホッカイロ [MSSP] ページ2
- えおえお
*
寒いのは苦手だ。手がかじかんで上手く書けずに、ミミズみたいな字が蔓延るノートの端をやぶり、書き直す。
「……大変だねぇ」
俺の机の真向かいで、椅子をぐるりと回し、腰掛けた女子。
もうすぐ次の授業始まっちゃうよ、なんて言いながら黒くて小さな何かでミミズたちを一掃していく。俺がやぶった紙はすぐに綺麗になった。
「これ、メモとかするのにあると便利だよ。捨てちゃうつもりなら頂戴」
「え？ ……いや、いいけど…」
「ありがと！」
言うなり膨れ上がったペンケースの中にぐしぐしと詰める。そんな風にして次第にペンケースが肥えていくんだろうなぁと、半ば他人行儀な面持ちで見ていたら、又もや勘違いされたらしい。
ごそごそとケースが生き物のように波打った。と、思えば。
「このカイロと交換する？」
……ずいっと目の前に突き出された“カイロ“とやら。先ほどの消しゴムと同じくケースの中で暴れ回っていたのか、ボールペンや蛍光ペンのインクがそのカイロを奇妙に彩っていた。
上手く笑えていたかどうかはわからない。
でも俺は「ありがとう」と平静を装って受け取った。
*
それから一日が経ち、すっかり忘れていたが彼女にもらったカイロは机の中で冷たくなっていた。
ぎゅっぎゅっと揉みこんだら発熱しないものか。
今日もとても寒かったから、一応コートに手袋、マフラーと、まるで雪だるまのように着ぶくれしつつも、完全防寒だったと思っていたのに。
「おっはよー！えおえおー！」
教室の隅で震えていたら、どかん！と背中を派手に叩かれた。
いたっと声が漏れる。
「相変わらず寒そうだね？ 私があげたのもうきれた？」
「…きれたって言うか……。あ、なにその呼び名」
「愛称だよ、愛称！ 私は呼び捨てで良いから！」
「いや、そんなの」
一方的にまくしたてられ、挙句開いていた窓からの冷たい突風が頬に直撃した。
途中でまごまごと言葉が口の中で消えて寒さに言い返す気力を失くし、「まぁいいや…」と席につく。すると、
「寒がりなえおえおには、ほら！」
ポケットから真っ白なカイロが出てきた。
「これ、どうしたの？」
「近くのコンビニで買った！」
「わざわざ？」
「うん、まぁ……わざわざかな！」
悪気の無さそうな笑顔につられて、俺は「ありがとう」と、今度は素直にカイロに手を伸ばしたのだった。
*
甘くなくてごめんなさい!また後日続き書きます〜
夜に紛れてロマンティック [つわはす]→←今日は泣かない予定です [アブ]
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 547人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サラ - うおおおキヨさんんんん!!私のリクでしたか！ありがとうございます！もうすぐで完結しちゃうんですね…ちょっと悲しいです(´；ω；`) (2016年5月14日 22時) (
レス) id: 72c8aad68f (このIDを非表示/違反報告)
はちか(プロフ) - サラさん» もちろんそうです！！お待たせしました、すみません（；；） (2016年5月12日 23時) (レス) id: 7bd8392448 (このIDを非表示/違反報告)
サラ - はちかさん» ふわぁぁもしかして私のリクでしょうか、優しく頭を撫でてくれって！例え違っても最高です！私頭撫でられるの大好きなので！続き待ってます！(*^-^*) (2016年5月7日 22時) (レス) id: 72c8aad68f (このIDを非表示/違反報告)
サラ - はちかさん» はい！待ってます♪(○´∀｀○) (2016年4月21日 21時) (レス) id: 72c8aad68f (このIDを非表示/違反報告)
はちか(プロフ) - ソース屋さん» はい！ぜひ！（＾O＾） (2016年4月11日 21時) (レス) id: 7bd8392448 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はちか | 作成日時：2014年11月21日 23時
