欠陥女子【センラ】 (ページ7)

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は！？葵がcrewなん！？

俺の心では動揺と混乱が渦巻いてとても混沌としていた。

顔が引き吊りそうになったのを必死で堪えて、何とか笑顔を取り繕った。

「あぁ、名前は知ってるで。歌い手やろ？」

俺は自分の体裁のために名前は聞いたことある程度で留めた。

その返答を聞いて、葵は意外とでも言いたげに少しビックリした素振りを見せたが、次の瞬間、パッと表情を変えて次々に話し始める。

自分が志麻リスのこと、それぞれのメンバーの魅力など散々聞かされた。

葵は歌い手としてのセンラを「志麻くんの相方で安定のオチ担当だけど、crew思い」って言った。

ふぅん、こいつには俺の事そんな風に見えてんねや。
志麻くんの相方、って言う辺りやっぱ志麻リスやな。

そして、Aに現在布教中で誠を聴かせていた、と。

えぇっ！？
Aが曲を聞いた？俺等の？

……やばい。どないしよ、少し恥ずかしいわ。

平静を装い、俺はAに問いかけてみた。

「…誰がええな思った？」

彼女はちらっと俺を見て恥ずかしそうに俯いて、えっと、なんて言うもんだから、俺の心臓はどんどん高鳴っていく。

歌い手の推しが俺であって欲しい
でも、普段の俺をもっと見て欲しい
どんな俺も見ていて欲しい
こんな思いが複雑に絡み合って、もうどうしようも出来ん程ぐちゃぐちゃになってしまっている。

「…センラ？さん……です」

Aは歌い手の界隈を知らんかったのか、俺の名前の最後に疑問符を付けた。

Aの推しが……俺？

どないしよ、めっちゃ嬉しい。
めっちゃ嬉しい筈やけど、切ない。

きっとそれは、こいつが今呼んだのは「折原千羅」やなくて、「センラ」やったから。

どちらも俺には変わりない筈やのに、Aの感情が普段の自分には向けられてへん。
自分の別の人格に向けられたものみたいやった。

「何でセンラさんが良いって思ったん？」

葵、よく聞いてくれた。

「センラさんの声は……千羅さんに似てるから、聞いててびっくりしたし、千羅さんが画面越しに居るみたいでドキドキしました」

えへへ、と照れながら彼女は両手を口元に充ててそう言った。

無自覚に鋭くないか？
何か、バレんのも時間の問題っぽいねんけど。

「ふぅん、俺に似てる…ねぇ。Aは午後は俺と来るんやろ？」

「はい、ご一緒させて頂きます」

Aは葵の指導のもと、アカウントを開設して早速俺等と葵をフォローしていた。

Senra side.end