欠陥女子【センラ】 (ページ5)

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「浦島坂田船のファンのことをcrewって呼んで、うらたぬき、うらたん推しの人をこたぬき、志麻くん推しを志麻リス、となりの坂田、さかたん推しは坂田家、センラさん推しはセンラーって言うんだよ」

「中にはイラスト描いてたりするcrewもいたり多種多様な推し方をしているんだ！」

「確か、そろそろ夏ツアーの応募が始まるんだよな、応募しないとっ」

葵君のことが好きな人って多分誰も彼のこんな饒舌な姿を目の当たりにしたことはないだろう。

そして、葵君の浦島坂田船？への熱量は留まることを知らず、魅力を布教し始めてどれだけ経っただろうか。

彼をここまで虜にさせた彼等の存在が気になって、私は

「ねぇ、お勧めの曲ってないの？」

と訊いてみた。

彼は暫くうーんと動画サイトで曲を漁っていたが、

「これ…かなぁ、誠-Live for Justice-」

と動画を再生させて私に差し出してきた。

曲が始まり、私は画面をじっと見つめる。

世界観に吸い込まれた気がした。

葵君の推しは紫の髪の人…志麻くん？らしいけど、私は黄色の髪の人の声が好き…かな。

何だろう、何処か安心感のある声なんだよね。
ドキドキするけど、落ち着くっていうか何か複雑な感じ。

「どうやった？惚れるやろ？」

葵君の声にはっとして、慌てて彼を見ると、少し申し訳なさそうな顔をしていた。

「A……余韻に浸ってた？」

彼の言葉に少し顔が火照りながらもこくんと頷いた。

「あぁ～ごめんな。で、誰がいいなって思った？」

「この人、この黄色の…」

私が言い切る前に葵君が話し出す。

「センラさん？志麻くんの相方だよ！俺は志麻くんの次に好きだなぁ！」

「そうなんだ、センラさん？の声って安心感あるんだよね。何か何処かで聞いたことあるような」

私は誰の声と似てるのか必死で考えてみた。最近聞いた声なんだけど、誰なんだろう。

その時、背後から両肩にポンと手が置かれた。

誰！？と思い、振り返ると千羅さんが少し意地悪な表情をちらつかせながら、笑っていた。

「なんやAと葵、楽しそうやなぁ。俺も混ぜてや」

そう言うと彼は私の空いているもう片方の隣に腰を下ろした。

モヤモヤとしたものが少しだけ晴れた。
あ…センラさんの声って千羅さんと似てるんだ。

というか、このイケメン2人に挟まれる状況になっている件について。

「葵、Aと何話してたん？めっちゃ盛り上がってたみたいやけど」

千羅さんが彼に尋ねた。