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その後の営業も無事滞りなく終了して、彼女を用事があるという場所の最寄り駅まで送った。
俺もライブの打ち合わせをするために集合場所である坂田の部屋へと足を運ばせる。
その間も考えていたのは、Aのこと。
一生懸命、取引先との関係を良好かつ強固なものにしたろと励む彼女を隣で見て、これから先もAを側で見てたい、そない思った。
それは先輩としては勿論、彼氏という特別な存在として、や。
せやったら、やっぱ…Aの心を捕らえなあかんから、想い伝えて意識させるんが効果的やな。
おっしゃ、恋愛マスターとして、一肌脱ごうやないか。
そう決意した頃には、部屋の扉の前にいた。
インターホンを鳴らすと家主の聞き慣れた明るい声が返ってくる。
「おー、今開けるな!」
がちゃり、という音とともに開かれた扉の先には赤と黒のチェックのシャツを腰に巻く坂田が居った。
通されたリビングには、うらさんと志麻君も居って、俺が1番最後やったか、と少し申し訳ない気持ちに苛まれる。
「すまんな、待たせてしもて」
「んーぃや、そんな待ってないで。それに坂田からおもろい話聞けたし」
志麻君は含みのある言い方をしてきた。
泣き黶を携えるその顔は分かりやすくニヤついていた。
「やっぱ本人のことだからさ、センラの口から聞きたいよな」
意地悪く言い放つうらさんはまさにドS顔。
これは逃げられへんし、いつかは言わなあかんことやし、と覚悟を決めて、Aとのことを話すことにした。
出逢って1月しか経ってへんけど、Aに惹かれていること
でも彼女がセンラーになっていること
明後日思いきって告白したろ思ってること
3人は時折相槌を打ちながら聞いてくれた。
そんな優しさが心に染みて、今から紡ぐ言葉を吐き出すのに、緊張で声が震えてまう。
「大方理解は出来たけど、なんでそんな躊躇うような言い方になんの?」
坂田が、少し怪訝そうな低めの声で話し掛けてきた。
何年も一緒に活動している仲やから、こいつがどんな思いで問い掛けているのか痛いほど分かるし、もし俺が坂田の立場やったら同じように訊いたと思う。
「だって…俺だけの問題じゃ無ぉなってくる。先輩と後輩としてでなく…歌い手とリスナーの恋愛にもなるんや。叶わぬ恋って俺にリアコの子も居てる。何より皆に迷惑かけたないんや」
俺は、話してる間聞いてくれてる3人のことをまともに見ることは出来ひんくて、俯いていた。
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kne(プロフ) - 感動しました。 続き楽しみです。 (2021年9月28日 20時) (レス) id: ee34aec55d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏斗 | 作成日時:2020年2月12日 17時