検索窓
今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:64,013 hit

ページ11

月が綺麗やな。


この言葉に私の鼓動はどくん、と大きく高鳴った。


あの意味で受け取ったら駄目だ。
夏目漱石が "I love you." を「愛してる」と言えずに「月が綺麗ですね」と訳したように。


多分、ただ都会で見る月も良いものだということ。


でも、千羅さんのこの表情は…真剣な眼差しは、どういう事なんだろう。


それでも自惚れなんてもっての外だよね。
千羅さんが、私を好きなんて、あり得ない。


心に暗色の濃い染みを落としながらも、そう言い聞かせて「そうですね」と笑ってみせた。


「っ!…そろそろ、戻ろうか」


一瞬だけ千羅さんは切なげに顔を歪ませたが、すぐに私の好きな微笑みを向けてくれた。


私は頷くと、歩み始めようとした。
まさにその時___。


「きゃっ……!」


足がもつれてしまい、こけそうになった。
ぎゅっと目を瞑り、これから来るであろう痛みに耐えようとした。


あぁ、最悪。
よりにもよって、千羅さんの目の前で転んでしまうという、こんな醜態晒すなんて。


とんっ、と何かに衝突した。
……あれ、痛くない?


恐る恐る目を開けると、彼が私の身体を抱き抱えてくれていた。


「あっぶな…Aもう少し千鳥足やん。俺が支えたるから、一緒に戻ろうな」


「すみません、有難うございます」


千羅さんは私の肩を抱き、歩調を合わせてくれた。


この優しさが嬉しくもあり、誰に対しても同じなんて思うと、苦しくもなる。
まだ彼女でもないし、ましてや彼女にしてもらえるのかも分からないのに、嫉妬なんて醜いなぁ。


片想いってこんなに辛かったっけ……?
久し振りの恋は、私を困らせてばっかりだ。


「ほらA、もう着くからボーッとすんな」


千羅さんに支えられ、再び輪に入ると、周りの酔った先輩方に茶化された。
そんな中、葵君が少しだけ複雑そうに笑っていたことが私の心に靄を作った。


誤解は解けたものの、そのまま新歓はお開きとなった。

_____________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
『華と微睡む愛の世界』を読んでくださっている方には再び言うことになるかもしれません。

新型コロナウイルスが連日報道されていますが、皆さんは大丈夫ですか?
政府から、小中高及び特別支援学校への休校要請もあり、戸惑うこともあるかと思いますが、お互い健康に気を付けて有意義な休みにしましょうね!

奏斗

募りゆく(All Senra side)→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (134 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
450人がお気に入り
設定タグ:歌い手 , 浦島坂田船 , センラ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

kne(プロフ) - 感動しました。 続き楽しみです。 (2021年9月28日 20時) (レス) id: ee34aec55d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:奏斗 | 作成日時:2020年2月12日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。