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プロローグ ページ2

高校生の時、私は水泳の授業が嫌いだった。


もっと具体的に言うと、前後の着替える時間が嫌いだった。


周りの女子は下着を新調したことだとか恋人のことだとか話している。


それを聞くのは苦ではない。


同級生の幸せそうな顔は微笑ましかった。


けどある時、訊かれる。


「Aってまだ初めて来てないの?」


クラスの女子は皆知っている、私のそっちの事情。


この年で水泳皆勤賞なら疑問に感じるのだろう。


まぁ、とだけ答えた次の瞬間、次々に紡がれる言葉。


「大丈夫なの?進路のこともあるから早めに病院行った方がいいよ!」


「誰かと行為に勤しんだら来るんじゃない?w」


「あいつに言いなよ、引き受けてくれるんじゃない?w」


大半が冷やかしだった。


デリケートなことだから冷やかすために訊くのは止めて欲しかった。


勿論男子に言える内容でもないし、養護教諭に相談しても


「個人差あるからそのうち来るよ、大丈夫」


と言われるだけだった。


数人の友人は何度も産婦人科に行くことを勧めてくれたし、もし何かあったら言ってね、と優しくしてくれた。


それでも、この時は耐え難かった。


早く話が逸れることを願った。


男女交際には複雑な心境を抱いていた。


人並みに恋愛したい思いもあり、それなりに恋をしていた。


数人だったが、彼氏もいた。


最後の彼氏と純潔を卒業した。


その後も彼と幾度か行為を重ねていったが、私は意を決して抱えている事情を話した。


「それって付けなくても妊娠しないってことじゃん、付けるのもどかしいからラッキー」


「しかも、それって女としてどうなの?w」


彼の言葉に幻滅した。


鈍器で殴られたような衝撃が身体を走る。


彼には分かって欲しかった。


けど、言わなければ良かった。


やっぱり、男性にとっては子孫を残すことが大事なんだ。


「私は、貴方の欲を満たす道具じゃない!」


そう言って彼と別れた。


信用するから馬鹿を見たんだ。


私にはこの現実は生き辛い。


そんな思いを抱きながら現在に至る。


治療を始めて5年目に差し掛かろうとしていた。


私は就職して、配属先の部長から教育係を付けて頂いた。


「初めまして、三浦Aさん。教育係を任された折原千羅です。何でも聞きぃや、よろしゅうな」


「よろしくお願いします、先輩。Aって呼んでください」


「先輩は固苦しいわ〜」


先輩…千羅さんは照れを帯びた微笑みを私に向けた。


優しそうだなぁ。

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kne(プロフ) - 感動しました。 続き楽しみです。 (2021年9月28日 20時) (レス) id: ee34aec55d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奏斗 | 作成日時:2020年2月12日 17時

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