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色々なことがあったけど、ようやくお粥を食べ終えた私は志麻さんに連れられ、先程自己紹介した部屋に入った。うらたさんもさかたんもセンラさんもそろっていた。
今から言わないといけない、此処でお世話になりますって。
我儘言うけど許してくださいって。
意を決した私の瞳に映った4人はどことなく切なげな顔をしていた。
「俺達と……一緒に住めへんの?」
さかたんが悲しそうにポツリと呟く。
違う!
私は貴方達と住むことに決めたの!
あと少しで紡がれるはずの言葉は、琥珀の瞳を潤ませた彼の発言によって遮られる。
「やっぱり、男4人の中になんて貞操考えたら無理ですよね。」
まぁ、貞操に関しては思い辺りあるけど、私の想いを聞いてよ!
酷く傷ついているような彼等の声に、思わずぎゅっとスカートの裾を掴む。
すると、俯いたままでいたうらたさんが静かに声を出した。
「Aが好きだから一緒に居たいけど、お前の幸せが俺等の幸せなんだ。」
うらたさんのほうを見ていると、彼は私の顔を何かを決めたような強い眼差しで見つめてきた。
「なぁ教えてくれよ、A。お前はどうしたいんだ?」
私の想いを汲み取ろうとしてくれるうらたさん、否《浦島坂田船》の全員。
でも、うらたさん以外、私の顔を見てくれない。
うらたさんの目をしっかりと見て、ゆっくりと口を開く。
「私は…私は、皆さんと一緒に住みたいって思っています。」
私のこの答えを誰も予想していなかったのか、皆鳩が豆鉄砲を食ったようだった。
「ほんまに?一緒に住めるんか?」
センラさんが大きく見開いた眼で私を問いかける。潤んでいたその目から一筋の涙が流れ、頬を伝い、粒となり彼の服を濡らす。
彼等を無意識のうちに傷つけていたのかと思うと、心が痛んだ。だからこそ私は彼等に笑顔を見せなければならない。
「はい、でも私の我儘にもなるんですけど、それを叶えてくれるのなら…。」
「言うてみぃ、Aのためならなんだってするで。」
志麻さんがそう言って私を導いてくれた。
こんなにも優しく微笑んでいる彼を見るのは初めてかもしれない。
「あの、1月に1回は実家に帰って両親に顔を見せたいんです。後、学校には行かせてください、大学で学びたいことがあるんです。」
「Aがそれを望むなら、ようこそ、お姫様。」
そう言ってうらたさんをはじめ、全員が私を割れ物を扱うかのように抱き締めた。
彼等に愛しさを感じた私はもう彼等の愛から逃れられないのだ__。
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奏斗(プロフ) - ハクトさん» コメントありがとうございます!頑張ります!これからもご愛読のほど宜しくお願いします! (2020年1月9日 22時) (レス) id: 71101c4384 (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - コメント失礼します!とても面白いです!更新頑張って下さい、応援しています! (2020年1月9日 21時) (レス) id: 9248964edc (このIDを非表示/違反報告)
奏斗(プロフ) - 名無し16825号さん» ありがとうございます!!そう言って頂けてとても嬉しいです!これからもご愛読のほど宜しくお願いします! (2020年1月9日 18時) (レス) id: 71101c4384 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - コメント失礼します!好みにヒットしました!これから頑張ってください! (2020年1月9日 17時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏斗 | 作成日時:2019年12月31日 23時