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一人残された部屋で呆然としていると、ノックが聞こえた。
「俺や、開けるぞ。」
この声__志麻さんだ。
先程の行為めいたこともあり、少しばかり身体に力を入れてしまう。
実を言うと少し怖かった。志麻さんが、じゃない。志麻さんとの出来事も、うらたさんとのキスも、さかたんとの間接キスも嫌、気持ち悪い!と思ったわけではない。自分にこんなに順応性があるとは思わなかったけど、彼等の愛と快楽に溺れてしまうことが怖い。
今はまだ、そんなこと言えないけど。
「そんな怖がらんとってや。さっきの嫌やったらすまんかった。」
はっと我に返り声のしたほうを見ると、志麻さんが正座で深々と頭を下げていた。
もしかしたら、本当は誠実な人なのかもしれない。土下座されてるみたいでこっちも申し訳なくなってくる。これだけは言わないと誤解を与えることになるのかも……。
「あの……頭をあげてください。決して嫌だったわけではないんです。ただ……」
「ただ?」
私が言うのを待っているかのように上目遣いで見てくる。この人といい、他の人といい、私の心を搔き乱すことが得意だ。
「少し驚いてしまっただけです。恥ずかしながら、異性とこうして触れ合うことが少なかったもので。」
「多分、俺達の愛情表現はそこらにいる奴らと比べたら激しいかもわからん。でも、俺等はお前が、Aが大好きや。今は慣れへんやろうけど、できれば慣れてほしい。こんな愛し方しかできひんけどごめんな。……愛しちゅうよ。」
そう、愛を伝えてくれた志麻さんの顔はほのかに紅く色づいていた。
「……嬉しいです。」
ごめんなさい、今はこれだけしか言うことが出来ません、とは心の中で言うのに留めた。好きになりつつあるのかもしれないけど、そんな中途半端な想いを、まっすぐに伝えてくれた貴方に言うのは失礼だ。
「あ、そうそう、坂田からスプーンを預かってたんやった。」
ん、と私にスプーンを差し出す志麻さん。
それを彼の手から受け取って、再びお粥を口に運び進める。
猫舌の私にも食べやすい位に冷めたお粥を食べながら、志麻さんを見ると、彼はスマホを弄っていた。
すると、何かを思い出したかのように志麻さんが私に話しかけてきた。
「そういや、坂田が俺にスプーン預ける時、なんか顔紅かってんけど、何かあったんか?」
思わずスプーンを落としてしまったが、志麻さんがキャッチしてくれた。
__少し意味深な笑みとともに。
「……その感じじゃ図星やな。」
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奏斗(プロフ) - ハクトさん» コメントありがとうございます!頑張ります!これからもご愛読のほど宜しくお願いします! (2020年1月9日 22時) (レス) id: 71101c4384 (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - コメント失礼します!とても面白いです!更新頑張って下さい、応援しています! (2020年1月9日 21時) (レス) id: 9248964edc (このIDを非表示/違反報告)
奏斗(プロフ) - 名無し16825号さん» ありがとうございます!!そう言って頂けてとても嬉しいです!これからもご愛読のほど宜しくお願いします! (2020年1月9日 18時) (レス) id: 71101c4384 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - コメント失礼します!好みにヒットしました!これから頑張ってください! (2020年1月9日 17時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏斗 | 作成日時:2019年12月31日 23時