4話 ページ6
「お帰り、深霜ちゃん」
家の扉を開けると姉が3人、並んでたっていた。
無表情な顔からは何も読み取ることが出来ない。……否、怒りだけは伝わってくる。
「……ぉ、お姉ちゃん。ただいまぁ、私お腹すいたよぉ……」
家ではこの喋り方、これ鉄則。
媚を売るみたいな雌の声。女を意識した顔、仕草。完璧なほど仕込まれた妹の演技。
いつもなら、直ぐに料理が出されるのだが今日は違う。
「……あんた、近所の吐月とかいうオタクとまだ絡んでんだって? 」
1人目の姉、
その表情、声にはありありと嫌悪感が浮かんでいた。
"違う""霖はそんなんじゃない"
言いたいけど言えない言葉が胸の中に浮かんでは消え、消えては浮かんで。
最終的には、俺は口をつぐむしか出来ない。
「……もう絡まないって約束する? 」
2人目と3人目の姉がそう確認するような口調で聞く。
約束、なんて可愛いものではない。
俺を縛るための太い縄だ。
「ぅん!! 私、約束できるよ!! 」
にっこり笑顔で。何とも思っていないように。
俺は姉に媚を売るしかない。
「そう。着替えておいで、料理の準備しておくから」
「はぁい!! 」
ﾄﾞﾀﾄﾞﾀと階段を上がる。
1番目の姉は、こういう元気さを好む。
この家で生きたかったら、姉の好きなキャラを演じればいい。
「……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
部屋の扉を開け、中に滑り込む。
鍵をかけて、仮面を外す。
従順な妹の仮面は外れ、糞みたいな男が顔を出す。……醜い、汚い男。
「……糞みたいな面して……」
こんな顔、捨ててしまいたい。
"妹"等というレッテルを剥がしてしまいたい。
「……助けてよ……せんぱぃ……ｯ」
鞄の中から写真を取り出す。
先輩は笑顔で。格好良くて。
……ふ、と。心が軽くなった。
「……よし。……お姉ちゃぁぁぁん、お腹すいたぁぁぁぁぁ!! 」
"私"はそう言って、階段を降りる。
……これが、私にできる唯一の罪滅ぼしだから。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←3話
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜鸞 | 作成日時：2019年6月20日 15時
