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シゲと小山が手越と一緒に食べられるようにっておかゆをつくっている間、俺はすっかり軽くなってしまった手越を抱いて寝室に行った。
たぶんまだほとんど体重戻ってないよなあ。
本当は退院できる条件は揃ってなかったけど、手越がどうしても、って言うからこれまた条件つきで退院させてもらったんだもんね。
特にすることもなかったから、ベッドの上に腰をおろして手越のことを見ていた。
どんな夢を、見ているんだろう。泣きそうな顔を見つめて苦しくなる。
いつからだろう、手越が俺のことを見なくなって、虚ろな目でどこか遠くを見つめるようになったのは。
いつだって手越は、俺の目を見ていたっていうのに。
「……っ、は、ぁ……!」
「、てごし…?」
「はあ、っ……」
突然、手越が目を開けて起き上がった。
ふらついて倒れそうになったからだを支えながら、手越の顔を覗き込む。
「はあ、っ、ごめ、なさ…っ」
「てごし、」
「はあ、っう……けほっけほ、っ!」
「大丈夫、大丈夫だから。吸って吐いてしよう」
「っ、ひゅ、けほっけほっ、」
震える手越の背中をさする。なるべく優しい声を出すように心がけても、手越は反応しない。
ゆっくり背中をさする手と反比例するように、手越の呼吸ははやくなっていく。
「てごし、わかる?」
「けほ、…は、ぁ、わかってる、の、」
「……え?なにが、」
「わかっ、てる、からぁ……!ごめんなさい、……っ、ひゅ、」
「ごめんなさい……?」
思わず、背中をさする手を止めてしまう。
……何に対しての、
「は、っ、ぁ……けほっけほ、けほっ!」
「……苦しい、よね、てごし、こっち見てね」
ぐらぐら揺れる気持ちを抑えて、自分を落ち着かせる。
大丈夫。1番不安なのは、手越だ。
今俺が不安になれば、手越はもっと不安になってしまう。
「ごめんなさい、は言わなくてもいいよ」
「、っ…うん、」
「大丈夫。てごしは悪くない」
「……うん…?」
強く、手越を抱きしめる。
大丈夫。手越は悪くないし、謝る必要もない。
ひとりが辛い思いをすることはないんだ。
だって、誰も悪くない。
手越もシゲも小山も、……俺も。
間違えたし、傷ついたし傷つけたし
たくさんたくさん泣いたけど、
それさえも、俺たちの心の糧になっているはずだから。
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ふわり(プロフ) - いちご一会。さん» いちご一会。さん〜!そんなに愛していただけるお話になったんですね( ; ; )たくさん悩ませて、辛い思いをさせてしまった彼らがどんな道に進むのか、私自身も楽しみです。笑 ご期待に応えられるよう頑張ります!文章好きって言われるの弱いんですよ〜泣いちゃう……! (2018年5月11日 19時) (レス) id: 813d20c216 (このIDを非表示/違反報告)
いちご一会。(プロフ) - ふわりさん…!長い間更新お疲れ様でした!たくさん楽しませていただいてきたこのお話が完結してしまうのは、正直言ってちょっぴり寂しいですが、それ以上にふわりさんの書くNEWSくんたちがどんな未来に進むのかすごく楽しみで…!ふわりさんの文章が大好きです! (2018年5月8日 2時) (レス) id: 7f4c96fff5 (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - ルルさん» はじめまして、コメントありがとうございます。返信、とっても遅くなってしまってごめんなさい!(>_<)本当ですか……!私もルルさんの作品、とても楽しく読ませていただいています。更新も返信もすごく遅くて申し訳ないです……テストが終わったので頑張ります!(^^) (2018年3月1日 16時) (レス) id: 813d20c216 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - はじめまして。ふわりさんの作品楽しみに読んでます。何度も読み返しています。これからも応援しています。 (2018年2月12日 21時) (レス) id: e15aaf7d8e (このIDを非表示/違反報告)
もも - 大好きという言葉では表しきれないくらいです!何度見ても同じ所にほのぼのしたり泣きそうになったりしてます。 (2018年1月30日 22時) (レス) id: d9ae80f945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふわり | 作成日時:2017年11月10日 23時