1 ページ1
真っ直ぐに伸びる細く黒い髪。ぼんやりと遠くを見つめる瞳。左頬と首筋から肩にかけての火傷が痛々しい。不幸中の幸いというべきか、それでもギリギリなんとか命に関わりはしないようであった。至急部下に氷か、なくても水を持ってくるように指示をしたが、きっと痕は残ってしまうだろう。今にも折れそうな体躯の、どこか消えてなくなりそうな雰囲気を持つ少女。幽鬼のように生気がないのが、かえってこの世のものではないような美しさを醸し出していた。
「…、毛布を…」
は、と。それまで息を飲んでいたリオが、思考を取り戻したのか慌てて毛布を差し出した。
少女がゆるゆると自分に視線を向けてくるのをただじっと待った。少し前に見たときは化粧をして髪をひとつに纏めて結い上げてたのもあり、大人の女性だとばかり思っていた。しかしその素顔は己と大して変わらぬ少女だった。
少女がひと言、「ありがとう、ございます」と溢す。なんとか「ああ…」という言葉を形にした。
「あのひとは…」
不意に、少女が言葉を紡いだ。フ、と燃え尽きた館に目線を動かした。プロメポリスからも遠く離れた、隠すように建てられた屋敷の焼け跡。バーニングレスキューもフリーズフォーズも、きっと来ることはないだろう。
「あのひとは、孤独なひとでした。私に、亡き母の面影を重ねて…」
清涼な、けれどもどこか淫靡な声色だった。じっとりと耳の奥を支配した。
「きっと仕方がなかった。あのひとは寂しかっただけだから。…ああでも、せめて最期には、最期くらいは、『私』の名前を呼んで欲しかった」
＿＿＿＿お父さん
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Qoo | 作成日時：2020年8月13日 21時
