ピカレスクロマン ―転―【ガスパー】 ページ15
「やりゃあいけるって、頑張れって、オレも聞こえたらちゃんと行くからよ」
腹から声を出す術がわからないなら教えてやろうと考えて、いつもと逆だと気がついた。それもいい。ライラの識るものがまた増える。世界の一部を手渡しで見せてもらうのがガスパーは好きだから、同じことを返してやりたいと願ってもいたのだ。それにしてもまさかこんな形になるとは。
それでもライラは不安で堪らないというようだった。幼子の癇癪じみた声を上げる。なんだ、できるじゃないか。自覚が無いだけかとガスパーは一息ついた。
「むり！！」
「無理じゃねえよ」
「できない！！」
「出来るって」
現にできているのだ。ガスパーの腕のなかでガスパーの胸を両手で叩いて身動いで、こんなに元気に叫んでいる。これだけの声量があればきっと聞こえるに違いない。
「ぅえっ、ガスパぁのばか！！」
嘔吐きながら声を上げて泣き出した。これはまずいと抱き締める。わああ、うわああ、子どものように喚いてばかばかと詰ってくるくせに、ライラは離れる様子も見せない。離すつもりが端から無いガスパーとしては好都合だったが、やはり泣かれると敵わない。今回ばかりは自分に過失があることにした。ガスパーはこれでも馬鹿ではないので既に対策は講じている。そもそも離れなければいいだけなのだ。
ライラが落ち着いた頃に原因を話して聞かされたところに拠れば、何某かの獣に攫われたということではなかったらしい。魔力の消化を兼ねて姿や痕跡の一切を世界から隠してしまうという。人間の子どもというのはまたなんと難儀なことか。野性だったら親と逸れて呑まれて終いだろう。養い親にばかりは、というよりあのオスはかなり頼りにならない。全部終わって屋敷の惨状は明日以降に持ち越して、取り敢えずの簡単な夕食を終えた頃になってやっと部屋から出てきたのだあの男。大雑把のガスパーとて半目でじとりと見つめずにはいられなかった。だからこれも対策を練る必要がある。可及的速やかに行動せねばならない。
兎も角の応急処置として、ずっと手を繋いでいることにしよう。なんだかんだとこれが一番手軽なくせに効果てきめんであったために、本採用となるまでそう時間は要さなかった。
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烏衣(プロフ) - 三日月リンさん» 閲覧ありがとうございます！わざわざコメントして頂いたのに申し訳ないのですが、メリーさんとアンナだとクラスが異なりますのでルームメイトは遠慮させてください……その代わりに、よく二人でアクセサリーを見に行くような友人関係を結ばせては頂けないでしょうか…？ (2018年10月21日 18時) (
レス) id: e4c92fe861 (このIDを非表示/違反報告)
三日月リン - コメント失礼します！よろしければうちのメリーとアンナちゃんをルームメイトにしていただけますか？ (2018年10月7日 12時) (レス) id: ac270a254f (このIDを非表示/違反報告)
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