ピカレスクロマン ―転―【ガスパー】 ページ14
ガスパー、と。驚くほど掠れた声が呼ぶ。やっと聞こえたその声を聞きたくて聞きたくて、堪らなかったのだ。ずっと応えたかったのだ。
「おい大丈夫かライラ。誰にやられた？ 目玉まで真っ赤だ。なあ今までどこにいたんだ。探したんだぞ。探したんだよ」
膝を抱えたままのライラの正面に滑り込んで矢継ぎ早にまくし立てる。骨に少しの肉をつけて柔い皮で包んだような、脆い両肩に自分の腕先をしっかりとかける。人間の子どもはここまで冷える生き物なのか、と内心震えた。苦しげにか細い嗚咽を洩らし、またさめざめと涙を溢すさまが本当に目も当てられない、見ていられない。被食の恐怖に慄く人間の最期は皆泣いていたからだ。まさかライラの泣くさまを見ることになるとは思ってもみなかった。
指先に小さな爪の乗った、線のまろい両手が自分の方へと伸びてくる。そっと肩から掛けた古布を握り締めて、ほたほたとまた涙があふれて止まらない。これは安堵か。はたとそう悟ってしまえばもうどうにも堪らなくて、ガスパーは古布を大きく広げた中にライラを引きずり込んで抱き締めた。力の加減は難しくて神経を使うが、こうしたいのだからやるしかない。
「泣くな」
ふるえる身体の柔らかく、なんと脆いことだろう。ここに在るのだと自分で然と確かめたくて手放せない。泣かないでほしい。泣かせたくない。怖い思いはもう沢山だ。
「泣くな」
細い腕がガスパーをぎゅうっと抱き締め返してくる。離さないように、離れないように、ずっとそうしていてほしかった。だがそういうわけにもいかないから諸行無常。ガスパーは改善が必要だと睨んだ。
「なあ、次はもっと大きい声で呼べよ」
オマエのガスパーはオマエのところにすっ飛んでいくと約束できる。だから目一杯の大声で呼びつけてほしい。全部オレがやっつけてやろうとも。何が故でも誰が相手でも、必ずだ。
「むっ、むりだよ、ぉ、ひぃっく、ガ、スパー聞こえないもんっ、ぇう」
ライラが珍しく弱音を吐いた。しかも不服な内容である。ガスパーは己を呼ぶ声が聞こえない筈があるものかと勝手に確信している。だからライラに自信がないのだと判断した。
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烏衣(プロフ) - 三日月リンさん» 閲覧ありがとうございます！わざわざコメントして頂いたのに申し訳ないのですが、メリーさんとアンナだとクラスが異なりますのでルームメイトは遠慮させてください……その代わりに、よく二人でアクセサリーを見に行くような友人関係を結ばせては頂けないでしょうか…？ (2018年10月21日 18時) (
レス) id: e4c92fe861 (このIDを非表示/違反報告)
三日月リン - コメント失礼します！よろしければうちのメリーとアンナちゃんをルームメイトにしていただけますか？ (2018年10月7日 12時) (レス) id: ac270a254f (このIDを非表示/違反報告)
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