ピカレスクロマン ―転―【ガスパー】 ページ12
＊
ある日の朝だ。ガスパー、とライラの呼ぶ声で目を覚ます。寝覚めのいい方であるために、特別抵抗なくガスパーは身を起こした。ライラの呼びかけから、そう間が開く筈もない。
「ライラ？」
しかしながら振り向いた先にライラの姿が無い。影も形も、身動ぐ衣擦れも空気の揺れも、残り香も。ガスパーの目の前には何も無い。だが自分がライラの呼び声を聞き間違えることとて同じく無いのだ。
なにか変だ。どうしても妙だ。ライラは確かに自分を呼んだのに。寝床を後にしてガスパーは部屋を出た。ライラとその養い親の暮らす屋敷に招かれて以来、寝所としてあてがわれた一室である。さっと視線を巡らせようとも自分以外の気配はしない。
ここにいないだけだ。だというのに、それだけのことが酷く堪えた。どうにも悪い予感しかしない。だから早く見つけて、傍に置いておきたかった。
「おいライラ！」
ライラの部屋のドアを開け放つ。
「どこ行った！？」
階段を飛び降りる。
「出てこい！！」
ダイニングに転がり込む。
「返事しろー！！」
エントランスから呼びかける。
辺りをどれだけ見回そうとも、扉の陰から戸棚の隅までひっくり返して検分しようとも、ライラが見つからない。ガスパーは覚えがあった。巣から落ちた雛が、親を呼んで鳴いた一瞬後のことを。鳴き声以外を残して跡形もなく、蛇がぱくりと呑んでしまった。親鳥が呼び声を聞いて降り立った時には、何も残ってはいなかった。
仮初の胴の中央、人間ならば心臓が鎮座する位置が、一気に凍りついて重たくなった。身体の真中が凍えれば当然全身もずんと冷えるというもの。ライラは小さい。人間の幼体なのだから小さい。丸呑みにするなど容易いほどに。目眩が酷くてガスパーはたたらを踏んだ。聴覚は細く鳴る高音の幻を聞きつけて離さない。脳の芯が何かに蝕まれているかのように痛む。ズキ、ズキ、加速した脈動の調子に合わせて痛む。ガスパーは近場の棚を引き倒した。中身を吐き出しながら床に伏した棚の後ろは埃が目立つ。だが何もいない。
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烏衣(プロフ) - 三日月リンさん» 閲覧ありがとうございます！わざわざコメントして頂いたのに申し訳ないのですが、メリーさんとアンナだとクラスが異なりますのでルームメイトは遠慮させてください……その代わりに、よく二人でアクセサリーを見に行くような友人関係を結ばせては頂けないでしょうか…？ (2018年10月21日 18時) (
レス) id: e4c92fe861 (このIDを非表示/違反報告)
三日月リン - コメント失礼します！よろしければうちのメリーとアンナちゃんをルームメイトにしていただけますか？ (2018年10月7日 12時) (レス) id: ac270a254f (このIDを非表示/違反報告)
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