ピカレスクロマン ―転―【ガスパー】 ページ11
「オレはガスパー。なら、お前のナマエ……」
自分は相対する人間の、初めて受けた贈り物を、祈りを、言祝ぎを知らない。星ほど溢れる人間の中から、目の前の子どもがそれであると証明してみせる呪文を知らない。だから尋ねる。この人間が、正に先程ガスパーにそうしたように。
「名前は？」
幾千幾億とオマエを区別するために、オマエの大切なもののことを知りたい。ガスパーは胸に灯った親愛のままに問いかけた。ああ、と合点のいった人間が、ガスパーの目を真正面から見てくる。
「私の名前はライラだよ」
ガスパーの目の前に立っていたのはライラだ。夜色の眼差しと穏やかに届けられる声の、優しい少女。教えられた魔法の呪文を、そっと唱えてみた。ライラ、と呼んでみた。うん、そうだよ。ライラはガスパーに応えてみせた。
「よろしくね」
「ヨロシク？」
「あ、えっと、よろしくって言うのは……」
ガスパーは何も知らないし持っていない。今までの自分であれば、そんなこと歯牙にもかけず放っておいた筈だ。しかし、なあこれは何だライラと声に出すと全てが変わると知った。ライラが手ずから、世界の一部を手渡して見せてくれた。目の前にライラが立っている。ライラがガスパーを見つめているのがよくよくわかる。ライラ、と呼ぶ。なに、ガスパー。ライラは必ず応えてくれた。
その事実にガスパーの脳は思い切り叫び声を上げた。これこそは至上の喜びであると、ガスパーの脳は早口にまくし立てた。名前とは封印である。ガスパーはそれが良かったから封印を受けた。まじなう者が、世界中の全てのなかから自分を呼ぶのがライラならば。ライラが口にする自分の名前は一等良いものだ。この世の果てから呟かれてもきっと聞こえると信じられるほどに。ライラも同じであればいいと思った。自分に呼ばれる名前の響きに、尊いものを感じればいい。
この世のありとあらゆる有象無象に、良いだろう、と大声で自慢して回りたい。ガスパーは幸せを手に入れた。
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烏衣(プロフ) - 三日月リンさん» 閲覧ありがとうございます！わざわざコメントして頂いたのに申し訳ないのですが、メリーさんとアンナだとクラスが異なりますのでルームメイトは遠慮させてください……その代わりに、よく二人でアクセサリーを見に行くような友人関係を結ばせては頂けないでしょうか…？ (2018年10月21日 18時) (
レス) id: e4c92fe861 (このIDを非表示/違反報告)
三日月リン - コメント失礼します！よろしければうちのメリーとアンナちゃんをルームメイトにしていただけますか？ (2018年10月7日 12時) (レス) id: ac270a254f (このIDを非表示/違反報告)
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