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．
「じゅ、ジュンタさん、」
「どないした？」
「そろそろ帰りますね」
時計を見ればこの街にしてはまだまだな
時間だけど、普通に考えて夜はだいぶ更けていた。
「ひとりで帰ろうとなんかしてへんよな」
「え、」
「あかんよ、ちゃんと送らせて？」
「なんかすいません、」
「謝るよりありがとう言われたいな？」
「ありがとう、」
「ん、ええ子」
彼女の手を無意識にとって握って店を出る。
はじめは一方的に繋がれてるだけの俺より
小さな手も、きゅっと握り返してくれたから、
期待してもいいのかななんて。
車に乗り込めば密室にふたりきり。
ちょっとでも近づきたいがために、わざわざ
シートベルトを付けてあげたりなんかして。
「ほな、出発するで」
「あっ、お願いします、」
ちゃんとお礼を言えるところとか、鞄の持ち手を
きゅっと両手で握って座ってるところとか、
もう全てが俺のツボで。
信号で止まる度に彼女の方を
見つめてしまったのは許して欲しい。
．
「本当に色々ありがとうございました」
「いいえ？」
「えと、じゃあ…」
「待って？」
サヨナラを告げようとする彼女を
咄嗟に引き止めて。
「またさ……会ってくれへん？」
「〜っ！」
「俺これで終わりにしたないんやけど、」
「……いい、ですよ？」
「ほんまに？ええの？っしゃ！」
「ふふ、」
自覚なんてないんだろうが、
本当に彼女はズルいなと思う。
軽く弧を描いた唇を自分のそれで掬いたいと
思ってしまった。
「じゃあ今度こそ、おやすみなさい」
「ん、おやすみ。」
彼女が家へ入るのを確認し、俺も帰路についた。
．
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作者名：ぼんぼん。
| 作成日時：2018年10月21日 0時
