アンチヒーロー【ヒロアカ】 (ページ1)

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球磨川Aは敗者だった。

大富豪をすればいつでも大貧民になったし、人生ゲームで借金を背負わなかった事など一度もない。双六ではいつでもべっただったし、生まれてから今までじゃんけんに勝ったことだって1度もない。友達とテストの点数勝負をして勝ったこともなければ、運動会の徒競走ではいつでも最下位の旗を持っていた。

でも原因は、けして頭が悪かったからでも運動が苦手だったからでもない。

言うなれば普通。

彼女の能力値は普通でしかない。

テストの点数は60～70点を彷徨い、50メートル走は9秒ほどで走り抜く。

順当に行けば勝率は五分五分で、いくら運が悪くてもじゃんけんくらいは普通に勝ったことがあるだろう。

側から見ればそんな普通の少女に見える。

ではなぜ球磨川Aは勝つことができないのか。

理由は、少女が敗北の星の下に生まれてきた女の子だったからである。

要するに勝負という名目に対して非常に弱かったのだ。

少女がひとたび「勝負」だと認識してしまえばもう手遅れだった。
勝負をかけたテストは解答欄を一つずつずらして解いてしまったり、運動会の日には風邪をひいたり。

もうどうしたって勝つことはできなかった。

だから少女は心の底からヒーローになれないと思っていたし、正義の味方にもなれないと思っていた。

ヒーローはヴィランに勝つからヒーローと名乗ることができる。正義の味方は悪の権化に負けないから民衆に支持されるのだ。

小学校高学年のころ、自分が何にも勝つことができないとわかった時からヒーローに憧れを抱くことをやめた。