【短編集】月も星も綺麗で【m/z/m;n】

きょうはくもっていてつきなんてみえませんよ【11】 ページ32

みえなかった、だから、こたえられない

you side

心が読めない。
小さい頃から一緒に居たはずの幼馴染に言われた言葉だった。

いや、人間誰しも読めるわけないでしょ
とその時は返したけれど、成人し、周りの人からも言われるようになったことで、自分は分かりづらい人間なのだと。

心がなくなってしまった人間なのかと。
思うようになった。



そんな私、ツキもといAは今日、買い物に来ている。次の混ぜメン生放送が来週にあるために、その衣装を買いに来た。


『ねぇちお、この服良くない？赤だし、それに可愛いよ？』
11｢あぁ…いいんじゃねぇの｣

荷物持ちに連れてきたのは幼馴染のﾀﾗﾁｵ。
今では一緒に動画投稿サイトで活動する同志だ。

『っはぁ！ほんと！なんでもう少し気の利いたこと言えないの？！女の子と付き合ったことないわけ？！』
11｢ねぇよ…お前がずっと隣にいたから逆にお前と付き合ってるって学生時代勘違いされたわ｣
『ほんとに！？え、なんかごめん…』
11｢いや、別にいいけど…｣
『…！ありがと！！いや！やっぱり持つべきものは幼馴染なんだよなぁ！』


彼からの好意にはとっくに気付いていた。
そりゃぁ、何年も一緒にいたら分かるものだから。

けれど、その気持ちには応えられない。




今、私の右手の薬指には、指輪が嵌っている。

黄色い、ワンポイントのついた
シンプルだけれど、愛の詰まった

そんな、彼氏との指輪が。


11｢それよりAさ、とりっぴぃと最近どうなの｣
『ん？いつも通りだよ。だって、付き合ってること、公表してるしね』

とりと付き合っていることは周知の事実。
だから、ちおは何も言えない。

11｢…そうだったな、何も無い、がなによりだよ｣
『…ちょっとどうしたの』
11｢Aさ、彼氏い｣
『…ちおは別だよ』



行こう



遮り、手を引く。


『ごめんね』


呟いた声は少し濡れて。



11｢もう、こんな時間だし帰るか｣
『…うん』
11｢じゃあな｣
『…うん、またね』


そう言って駅の改札を抜け、人混みに消える。


電車の窓からはやけに綺麗な満月がとても冷たく見えて。

だけど、それすらも見ないふり。
見えないふり。

11『【つきが、みえなくなりそうです】』

だけど、私にはもう月も貴方の気持ちも見えないことにしなければいけないの。


『【きょうはくもっていてつきなんてみえませんよ】』


ありがとう、親愛なる幼馴染


6月23日【貴方の気持ちには応えられません】

でも、たいようがないとかがやけません【2】→←きょうはすこしはださむいですね【10】

ラッキーカラー

あずきいろ

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