終曲ライアーグラッド！ ページ43
◆
週に一度の全校集会。生徒たちは体育館の隣にある講堂へと集められていた。
「ヒュラル〜♪ ヒュラリラ〜♪ ヒュルッ♪」
白フクロウが、歌うように頭上を旋回する。
突如、生徒たちの手元にヒラヒラと多くの紙が舞い落ちてきた。
「『これより配ります校内新聞〜。大事なお報せなので読むように〜』……か」
フクロウの言葉が分かるのか、ペトルウィッチ寮の寮長が、そう呟きながら紙を一枚手に取る。
『学園を騒がせる恐怖の事件！犯人は小さなネズミ！？』
数日前までは起きていたはずの、生徒が次々と眠らされる事件――眠りネズミ事件。
教師陣からは何の説明も無かったが、どうやら動物園を逃げ出したネズミの仕業という事で解決したらしい。
「まぁ、本当は違うのだけれど……」
「え……違うんですか？」
彼の独り言が聞こえていたのか、横にいた他寮の生徒が、思わずといった様子で聞き返してきた。
どうも見覚えがある……寮長会議が終わった後によく見かける、チャイナロンプ寮の副寮長だ。
「あ、すみません、急に話に入ってしまって……。その、“違う”とはどういう事なのか気になって」
ご迷惑でしたら大丈夫なんですが、と付け足した青年の顔を、ペトルウィッチ寮長はまじまじと見つめた。
「……それは、既にキミも分かっている事なんじゃないのかい？」
「え」
「おいで。眠りネズミ君」
虚を突かれたように愛想笑いを浮かべる青年に――否、その肩のあたりに、寮長は手を差し伸べた。
「……キュウ？」
青年の制服の首元から飛び出してきた小ネズミが、肩によじ登り、小首をかしげた。
「あっ、こら！入ってなさいって……」
「シー……あまり大声を上げるとバレてしまうよ。この子が捕まるのはキミにとっても望ましくない事だろう？」
「それは……まぁ、そうですが」
よく分かりましたね、と青年は苦笑した。ここ数週間ほど、飼育小屋に寄りついていた小ネズミに懐かれて、仕方なくそのままにしていたのだが。
眠りネズミ事件とやらが始まり、この子は動物園から来たのかもしれないと発覚したは良いものの、今言い出せばあらぬ疑いをかけられる可能性が……。
「賢明な判断だ。さすがチャイナロンプ寮」
「……？ありがとうございます」
ペトルウィッチ寮長は、優しい手つきで小ネズミを持ち上げ、床にそっと下ろした。
「悪い大人に捕まらないようにね」
小ネズミは、こちらを振り返る事なく走り去っていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「募集企画」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リリコス(プロフ) - おぉ!! (2020年8月10日 23時) (
レス) id: d250400d1f (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - リリコスさん» はい！ケレイブさんを筆頭に、ユキさん、ショウさん、スフェノスさん、ジエルさんから成る喧嘩グループが存在する、という事になりますね！ (2020年8月10日 23時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
リリコス(プロフ) - 割り込み失礼するですが、ということは喧嘩グループの存在が実在になると言うことでしょうか！ (2020年8月10日 23時) (レス) id: d250400d1f (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - アイコンさん» 了解しました！素敵なグループ名をありがとうございます(*´ `) (2020年8月10日 23時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
アイコン(プロフ) - Violent sinners バイアラント･シナーズ 暴力の罪人達 です！ (2020年8月10日 23時) (レス) id: 215c5317bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
