�� ページ5
◆
「そうですね、ジナーフ寮長」
副寮長はジナーフと同じように穏やかな表情で答える。
例年の通り、ジョリーロジャー寮とは馬の合わない生徒が多いだろうが、大きな事件でも起こさない限り何ら問題はない。
元々、大人しい生徒の多い寮だし。それに。
(寮長も副寮長も優しそうで良かった……)
(きっと他の寮に比べて平和な寮なんだ……)
と、新入生達が思ったのは言うまでもない。
◇
「いいかお前達、よく聞け！！」
ライアーグラッド寮にて。
新入生達の列の先頭で、一人の少年が声を上げた。
「この寮には問題児が多く属する。それは単なる噂じゃない、事実だ。今年この寮に選ばれたお前達の中にも、腑抜けた奴らが多くいるだろう。だが！」
寮長サクラ･ライトオンは、怒りにも似た感情を隠すこともなく、新入生達に宣言した。
「この俺が寮長になったからには、今までの汚名を返上しなければならない。要するに、ライアーグラッドの寮生だからと言って、何でもしていいわけではないんだ。分かったな？」
元々ツリ目なそれを、さらに吊り上げて怒鳴る姿に、新入生達は何も言えなくなる。だが、何をそんなに怒っているのか分からない。
「まったく……」
前年度までの寮長と俺は違う、しっかりした寮に作り変えなければと意気込むサクラの肩を、副寮長がバシッと叩いた。
「まぁまぁサクラ、そんな怖い顔してたら、新入生達から怯えられるぜ！！」
「ふん、そのくらいがちょうどいいさ。俺はただの二年生じゃない、寮長なんだ。あんたも……」
彼の手を振り払い、サクラは代わりに彼の顔を指差してみせる。
「副寮長なんだから、騒いでないで俺をサポートすることだ。ジエル･ソリスト先輩」
「うーん、なけなしの“先輩”をつけてくれる辺り嫌いじゃないぜ！！その調子で俺達を楽しませてくれよ、サクラ！！」
ふと伏せられたサクラの顔は、青天の色のセミロングに隠れて見えなくなった。
「楽しませる……か」
小さく呟いたその声も、喧騒にかき消され、ジエルの耳には届かない。
「んん？何か言ったか？」
「……ああ。さっきも言った通り、この俺が寮長になったんだ。楽しい夢を見させてやるさ」
珍しくサクラが笑みを浮かべたのを見て、ジエルは何故かワクワクして仕方ない。
その直後、「これは……恋！？」と胸を押さえて言ってみせ、ふざけるなとサクラにキレられたのであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「募集企画」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リリコス(プロフ) - おぉ!! (2020年8月10日 23時) (
レス) id: d250400d1f (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - リリコスさん» はい！ケレイブさんを筆頭に、ユキさん、ショウさん、スフェノスさん、ジエルさんから成る喧嘩グループが存在する、という事になりますね！ (2020年8月10日 23時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
リリコス(プロフ) - 割り込み失礼するですが、ということは喧嘩グループの存在が実在になると言うことでしょうか！ (2020年8月10日 23時) (レス) id: d250400d1f (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - アイコンさん» 了解しました！素敵なグループ名をありがとうございます(*´ `) (2020年8月10日 23時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
アイコン(プロフ) - Violent sinners バイアラント･シナーズ 暴力の罪人達 です！ (2020年8月10日 23時) (レス) id: 215c5317bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
