�� ページ29
◇
「『さくらをたすけろ』って……どういう意味なんだろう？」
その日の夕食後。
ノアは自室にて、ひとり先程の出来事について悶々と思い悩んでいた。
「そのまま『サクラ寮長を助けて』って意味なんだろうけど……助ける？何から？どんな風に？」
当たり前だが、ノアの表情にはいつものような元気がない。
夕食時にも結局ジエルは現れなかった。自分のせいで犯人扱いされていると思うと、気が気じゃなかった。
「ジエルさん、大丈夫かな……」
そう呟いた途端、窓を雨粒がたたく音がした。みるみる内に窓の外が大雨になっていく。真っ暗な空が余計にノアの不安をかき立てた。
(ボクはどうすればいいんだろう)
こういう時、頼りになる人がいてくれたら……。
弱気になりかけた心臓は、いきなり響いた扉を強く叩かれる音で縮み上がった。
「ふぇっ！？」
『ノア！いるんだろ、開けてくれ！』
かなり切羽詰まった様子で扉を叩かれる。
開けてみると、案の定そこにはシュンが立っていた。
「シュンくん！」
「ノア、悪いがちょっといいか。聞いてほしい事があるんだ」
焦りからか早口にシュンは語ってくれた。
不良に呼び出された昨夜ごろから、記憶があやふやになっている事、数時間経つと何があったか何故か思い出せる事。
そして、それらはジエルに妙な催眠魔法のようなものをかけられてから始まった。今はその魔法が解けているらしく、何もかも覚えている、と。
「よかった……。シュンの身体に何もなくて、本当によかった。ボクからも話さないといけない事があるんです」
ノアも負けじと饒舌に今日あった出来事をシュンに教えた。
ジエルがサクラに犯人扱いされた事、ジエルのユニーク魔法、『サクラを助けろ』というメッセージ。
そして、恐らく、ジエルは犯人の正体を知っていて庇っているのだろう、という事も。
「すまねぇ、俺様だけのんきに魔法にかけられちまって……」
「シュンくんは悪くないですよ。とにかく、ジエルさんの冤罪を解くのが先です。……やっぱり、サクラさんが犯人なんですかね？」
“そうとしか思えない”という気持ちと“そうであってほしくない”という気持ちが半々だった。
「どう考えてもそうだろ。サクラを庇ってるのか、もしくは……二人ともグルなのか」
ジエルのメッセージからして、前者の可能性が高そうだ。だが、問題はどうやって犯人だと証明するか？
その時、扉が優しくノックされた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「募集企画」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リリコス(プロフ) - おぉ!! (2020年8月10日 23時) (
レス) id: d250400d1f (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - リリコスさん» はい！ケレイブさんを筆頭に、ユキさん、ショウさん、スフェノスさん、ジエルさんから成る喧嘩グループが存在する、という事になりますね！ (2020年8月10日 23時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
リリコス(プロフ) - 割り込み失礼するですが、ということは喧嘩グループの存在が実在になると言うことでしょうか！ (2020年8月10日 23時) (レス) id: d250400d1f (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - アイコンさん» 了解しました！素敵なグループ名をありがとうございます(*´ `) (2020年8月10日 23時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
アイコン(プロフ) - Violent sinners バイアラント･シナーズ 暴力の罪人達 です！ (2020年8月10日 23時) (レス) id: 215c5317bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
