秘密主義の魔女は水底へ……【ツイステ】 (ページ18)

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素材そのものページ18

重たい扉を押し開き、モストロ･ラウンジに足を踏み入れる。

「失礼します……」
「おや、Aさん。本日もお勤めご苦労様です」

　ここ数日のバイト――という名の脅迫による重労働――で、最初はびくともしなかった扉が開けられるようになった。
　ジェイドさんにぺこりと頭を下げながら、エプロンを身に纏う。

「新しい衣装ですか？」
「い、衣装というか……体操服姿もなんですから、お父さんに作ってもらったんです。あ、ジェイドさん達のことは話してませんよ……！」

　話したら締められるんだろうな……。『カフェに憧れがあるので、モストロ･ラウンジでバイトさせてもらうことになった』と話しておいて正解だった。

「ふふ、別に僕達のことを話すなとは言っていませんよ。話していいとも言っていませんけど」
「じゃあ話したらダメなんじゃないですか……」

　この人の笑顔も、少しずつだけど見慣れてきた気がする。

「あ、そのエプロン、とてもよくお似合いですよ。可愛らしい貴女にぴったりです」

　……こういう爆弾発言には未だに慣れないけど。

「それはどうも……」
「本心ですよ？シンプルな白のエプロン……素敵だと思います。素材そのものの綺麗さが引き立つ」
「……素材？普通の布だと思いますけど……そんなに高級な布でもないですよ？」

　「……鈍感ですね」と、やれやれといった笑みを浮かべる彼は、はい、と私に一枚の紙を渡した。

「今日のお仕事ですよ」

　……誰の字なのか、気が遠くなるほどたくさんの仕事が書き付けられていた。

「……ぶ、ブラック企業……」
「シラウオさんはホワイトですけどね」
「本当ですよ！！そのうち過労で黒く染まりますよ！？」

　デメキンちゃんになっちゃいます！！と、冗談のつもりで言ったのだけど、ジェイドさんには「その時を楽しみにしていますね」と返された。

「あの人も負けず劣らず変わった人だ……」

　弟さんも弟さんだけど、お兄さんもお兄さんだ。……あれ、そう言えば、あの双子さん達って、どっちが兄でどっちが弟ってあったんだっけ。

「何となくジェイドさんがお兄さんかと思ってたけど……どっちが上かなんて聞いたことなかったな」

　まぁ、今では先に生まれてきた方が兄だと言われていても、昔は先に生まれた方は弟だと言われていたらしいし。

「……あの人達、人間じゃないんだもんね……」

　あの二人を束ねているアズールさんは凄いな……と思いながら、私は指定されたテーブルに向かった。