【小説版】終末世界の彼ハ誰時 (ページ27)

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◆24.喧嘩両成敗/朝重春日ページ27

俺は花園と入れ替わる様にして猫型の元へ向かう。
　氷はギリギリ猫型の後ろ足にヒットしていたが、あれではすぐに逃げられてしまう。
　軽く舌打ちをしてからもう一度地面を叩こうとすると、猫型の足元から突如植物の蔦が伸び始め、猫型を包み込む様に巻き付く。
　戸惑う猫型。誰の仕業かすぐに分かる。と言うより、一人しか居ない。

「余計なお世話なんだよ!」

　その苛立ちを打つける様に、猫型の背中に刀を突き立て、胸のコアごと胴体を貫く。
　「ギャァァア!!」と痛みに絶叫する猫型は、パチパチと火花を散らしながら徐々に動きを止めた。機械音みたいで不愉快な悲鳴だった。
　猫型から刀を引き抜き、鞘に収める。ここまでの動作が居合いと言う物だ。まぁ、今日は弓矢背負ってるから、本調子とは言えなかったけど。
　そこに花園が駆け寄る。まるで鬼の形相だ。

「ちょっと! 抑えててって言ったじゃん! 何、腕切り落としてんだよ、このクソもやし!!」
「煩ぇな! テメェも手出してんじゃねぇよ! 自分の身の丈を知らんからそうなるんだ、クソ女!!」

　どっちもどっちだった。
　俺も油断してたから猫型に爆破されそうになって、花園も過信していたから熊型に形成を逆転される。この喧嘩、犬も食わん。いや、今此処を襲撃している“犬”は食うかもしれないが。

「そうだ。花園、姉貴見てねぇ?」
「あの第一班のオドオド系お姉さんの事か。見てないけど」
「あっそう」

　まぁ、期待してなかったけど。する訳ねぇけど。
　少し落胆していると、地面に大きな影が通り過ぎた。
　鷲型レイドロイドだ。だけど、なんだあの大きさ。普通の鷲型とは、倍近く大きさが違う。

「なんかアレ、大物の気配しない?」

　花園はニヤつきながら、先程鷲型が飛び去った空に指を指す。まぁ、只者じゃない事は分かるけど。

「今それどころじゃ無いから。じゃーな」

　俺は弓矢を担ぎ直し、鷲型とは真反対の方角へ進む。こんな所で道草している場合ではない。
　それに此処で花園の挑発に乗ってしまうと、そこから勝負に白熱してしまう。楽しいっちゃ楽しいが、正直今は気分が乗らない。
　後ろからは「ノリ悪ー!」「シスコン!」と文句と悪口が聞こえるが、徹底的にスルーだ。これが終わったら、渾身の罵倒を浴びせてやろう。俺を怒らせたらどうなるか、身を以て知るが良い。

　遠くの方で爆発音やサイレンの音が聞こえる。
　さっさと帰って、新作ゲームやりたいなと他人事の様に思いつつ、歩みを進めた。