【小説版】終末世界の彼ハ誰時 (ページ24)

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◆21.ご乱心/織笠真澄ページ24

「しね」とだけ吐き捨て、真澄は犬型レイドロイドのコアを破壊した。虚ろな藍色の瞳にバラバラになった機械生命体の姿が映される。

夕焼け空の下、国津神東部にて真澄は小型・中型レイドロイドの迎撃を任されていた。ただ量が多いからなのか、目立つ頭髪が敵の注意を惹くからなのか……倒しても倒してもキリがない程レイドロイドが集まってくる。

四面楚歌なこの状況、戦闘好きな真澄としては大歓迎であり本来なら気分が高揚する筈なのだが。

「あ"ぁああムカつく……っ！」

＿＿久しぶりの戦闘だというのに、虫の居所が悪い。飛びかかってくる犬型を蹴り飛ばし、空から攻撃してくる鷲型を金属バットでホームラン。普段よりも容赦の無さに磨きがかかっているように思える。

さて、なぜこんなに真澄が機嫌が悪いのかというと。数日前に靴屋でバッタリと出くわした戦闘部隊の隊員から頂戴したある一言が原因である。

「なぁああにが『ご乱心プリンにはシークレットシューズがお似合いだ』だぁ！？ふッざけてンじゃねえぞ、生え際後退しやがれクソがああああッ！！」

そう叫んで足元に集る犬型レイドロイドを思い切り蹴り飛ばす。

特殊戦闘部隊とは犬猿仲とされる戦闘部隊。その中でも特に仲が悪い隊員からの身長ネタのせいで、数日間腹の中でグツグツ煮えていたものが絶賛噴火中なのだ。言ってやったぜとばかりにほくそ笑んだ彼のことを思い出すと、金属バットを握る手に一層力が入る。

「来世でアイツ小人に生まれ変わってやがったらぜっってえ踏み潰して賞味期限が切れて変色した牛乳の中にぶち込んでミキサーにかけてやるッ！！」

いやいや怒りの矛先を人間に向けている場合じゃないだろう、と言ってくれる仲間がいればよかったのだが生憎真澄の周りには人っ子1人いない。それにもし誰かがいて何かを言ったとしても、暴走中の彼に言葉が届くとは到底思えないだろう。

八つ当たりしまくる真澄の動きはいつも以上に大雑把だ。攻撃を免れた何体かの鷲- III型が、鋭い嘴を武器に襲いかかってくるせいで体は擦り傷だらけ。
だがそんなこと御構い無しとでも言うように蹴る、バットで殴るをひたすら繰り返す。

「クッソ腹立つ……ッ！とりあえずお前ら死ねや……！」

後々何発班長の拳骨を喰らうことになるのだろう、なんて考えは頭の中には無かった。