【小説版】終末世界の彼ハ誰時 (ページ21)

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◆18.ギャンブル/水無月イユページ21

「最悪……」

水無月イユは国津神東部で、推定四メートルはある熊型のレイドロイドと対陣していた。

レイドロイドの方は鋭い視線を彼女に向け、今にも襲いかかろうとしている。

一方イユは、敵の腕、牙、武装された武器。攻撃の手段となる場所に意識を集中させる。確実に攻撃をかわす為だ。

両者の間に僅かな静寂が訪れる。

――来る……！

そう思った刹那、巨大なレイドロイドの全身が、恐ろしい速さでこちらに向かってくる。

全身全霊を込めた突進攻撃だ。

この攻撃規模大きさ、速さ。避けることは誰であっても不可能。

いち早く攻撃を察知したイユは、飛び込むようにして巨大な木が生い茂る森の中へ姿をくらませた。

熊型レイドロイドはそのまま森へ突撃、巨大な木々が、その攻撃力とスピードを奪っていく。

それでも少しずつ前へ進む敵の攻撃。イユは、それから逃げるために森の奥へ、奥へと駆け足で進んでいく。

――ここだ

木々をくぐり抜けた、ある場所で足を止める。ここより先は、崖。

高さは推定十メートル。人間が落ちればひとたまりもない。

数秒遅れて、レイドロイドがやってくる。森を抜けたこの場所には、攻撃を遮るものはない。

スピードを上げて、闘牛の如く、一直線に突撃して来る。

――後はギャンブル。お願い、

レイドロイドの強靭な突進が炸裂する寸前。

イユは崖から飛び降り、同時に逆流異能を発動する。

彼女の姿は、たちまちたばこに変化。レイドロイドの突進が起こす風に乗ってひらりと宙を舞う。

一方でレイドロイドは自らの勢いを止められず。崖の下へ真っ逆さまに落ちていく。

――なんとか上手くいくいった……。

イユはゆっくりと地面に落ちていき能力を解いて元の姿、元の状態に戻った。