【小説版】終末世界の彼ハ誰時 (ページ16)

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◆13.弱虫ファイター/赤迫音園ページ16

空が夕焼けに染まる頃。人を吐き出し、ガラリとした街に1人の少女の影がさす。

特殊戦闘部隊第二班、赤迫音園。

小柄な体格と不安げな表情＿＿＿さながら迷子のようにも見える彼女だが、腰に括り付けられた爆弾が戦闘部隊の人間であるということをはっきりと示していた。

閃光弾、その他手榴弾。音園の幼い容姿と釣り合わない物騒な武器が、彼女が駆け足になる度にジャラジャラと揺れる。

「んぎゃっ！？」

突然何かに飛びかかられ、音園の視界は急旋回した。
＿＿＿犬-Ⅰ型のレイドロイド。

小型相手とはいえ、他の班員や同年代の子供より一際小柄な音園が攻撃に特化したI型の突進に耐えられる筈もない。小さな体は呆気なく吹っ飛ばされ、全身を地面に叩きつけられた。

一瞬の出来事に悲鳴をあげる身体をなんとか持ち上げ、すぐさま体勢を立て直そうとするも先程の個体がまた飛びかかろうとしてくる。

「こ、このっ……さてはロリコンですね貴方っ！」

寸前の所で攻撃を避けると、自然と手が腰へと伸びていた。レイドロイドが再び飛びかかろうと近付いてくるのを良いことに、敵めがけて栓を抜いた手榴弾を思い切り投げつける。

乾いた、派手な爆発音が辺り一帯に響く。
レイドロイドは爆ぜて体もコアもバラバラになり、無惨な姿だけが残された。

「あっ、危なかったぁ……！」
心臓バクバクの状態でそう零す音園はというと、逆流異能で近くの建物の陰へと移動し、手榴弾による自爆を防いでいた。周囲の安全を確認し、胸を撫で下ろす。

影を操る以外に、影のある場所なら瞬時に移動することもできるこの能力、チキンな音園にとっては結構便利だ。

服についた汚れを払いながら、ばらばらになった某犬型の元へと近づく。先程まで動いていたものだと思うと多少罪悪感が湧いた＿＿＿ダメだ。ここは戦場だというのに、自分はこういう所が甘い。

「……生きる為なんですよ、か弱い子供に飛びかかった貴方が悪いんです。……ごめんなさい、でもおあいこじゃないですか」

貴方達だって私達を傷つけてるんですから、と付け加える。

かつては音園の家族も、音園自身も殺されかけたことのある相手＿＿＿恨まない理由は無いと自分に言い聞かせた後に、滑空する鷲型のレイドロイドを目にした音園は、一切音を立てることなく影の中に身を潜めた。