◆12.ケーキの恨みは百までも/塩崎龍志 ページ15
午後六時、三十四分頃。
「ああ、うめぇ……!」
一口ごとに広がる生クリームの濃厚な甘み、そこに程よくからみあういちごの上品な酸味。最後にとっておいたショートケーキを一口食べ、思わずつぶやいていたころだった。
突如、そいつらがあらわれた。
ガラス片が飛散し、そこにいた客が金など払う余裕もなく悲鳴を上げて逃げまどう。
「ふざっけんじゃねぇ…っ」
手近なところにいた犬型レイドロイドを感情に任せて殴りつけ、不意を突かれて宙を舞うそいつを尻目にとりあえず店から走り出した。
……痛い。
慣れないパンチなどを使うから手を痛めるのである。
悪態をつきながら振り返り、突進してくる犬型レイドロイドどもとばっちり目が合う。
「あぁん!?なんで俺を狙ってくるんだ!?」
ふざけんじゃねぇ、と本日三度目の悪態をつき、パニックに陥る一般人達を背後に一目散に逃げだした。奴らがついてきていることを確認しつつ、叫び声に満たされた街の中を走る。もちろん、いかつい狙撃用の銃など持っていない。だがあてがないわけではなかった。
「おう、ちょっくらこいつもらってくぜ」
顔を見ただけで露骨に嫌な顔をしてくる戦闘部隊兵から奪った銃を手に、瓦礫が散らばる区画までダッシュする。大型兵器を準備中の彼らにはいい迷惑だ。龍志の能力は銃弾に特殊な効果を付与し、狙った相手に確実に弾を命中させるといったもの。本当はもう少し何やらあったはずだが、龍志自身もあやふやなためまた今度。
「ここだぁ!!」
叫んで止まった先にあるのは…瓦礫で道をふさがれた行き止まり。
傍目から見れば間抜けの極みだが、ここは人間の強みを生かして瓦礫の上によじ登る。
振り返りざま瞬時に狙いを定めて引き金を引き――
銃弾は高くのびあがった一番大きな犬型レイドロイドのはるか頭上を通過、小気味の良い音を立ててそこらへんの鉄骨にぶつかった。
…弾を装填し直し、間をおかずにもう一発。
今度はレイドロイドに命中、しかし当たった場所は尻のあたりである。致命傷には遠く及ばない。
…が、その直後。激しい爆音とともに道の反対側が瓦礫でふさがれる。間をおかずにキャインという室内犬のような悲鳴。
「俺のケーキを奪ったことを後悔しながら消えろ。」
…一発目に付与した効果は爆発、二発目は混乱である。
あまり決まらない決め台詞を残してその場を去り、、、
…痛い。わき腹が痛い。
満腹状態でよく考えずに走るからこうなるのである。
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七夜(プロフ) - 更新完了しました (2018年5月5日 16時) (レス) id: 468c1cc159 (このIDを非表示/違反報告)
七夜(プロフ) - 更新しますね (2018年5月5日 16時) (レス) id: 468c1cc159 (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - すみません、書き込むの忘れてました。編集終了しました。 (2018年5月4日 16時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 編集します。 (2018年5月4日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 更新終わりました。 (2018年4月21日 19時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 x他9人 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年4月5日 22時