◆10.電話線を絶つ猫/朝重秋津 ページ13
※微流血表現
「え、あ、はい!」
どもってしまった。我ながら情け無い。
レイドロイドが来ていない事を確認し、再び階段の方を見た。手摺りの下、初老の男性が頭から血を流して倒れていた。服装からして此処の駅員だろうか。下半身が瓦礫に埋まっていて、身動きが取れない様だ。
「だ、大丈夫ですか!?」
「わ、私は何とか……それより、あの子を……」
駅員さんが指差す方向には、まだ小学生にも満たない男の子が非常口付近に座り込んでいた。親とはぐれたのか、グズグズ泣いている。
「階段が塞がる前、逃げ遅れていた子連れの母親が居たんだ……私があの子を抱いて逃げようとしたら瓦礫が……」
成る程。どうやら瓦礫に分断され、親子共々離れ離れと言う事か。幸いにも男の子には大きな怪我はない様だ。それと、恐らく瓦礫の向こう側に居るであろうこの子のお母さんは無事だろうか。
何がともあれ二人を救出しなければ……でも、どうやって?
(私じゃ男の子を抱えるだけで精一杯だ。瓦礫も持ち上がらないし、駅員さん担いで逃げる事も出来ない。でも、放置する訳には……)
逆流異能を使う手もあるが、私の逆流異能である発火能力は戦闘向き能力だ。下手に使えば、駅員さんが危ない。それに、こんな閉鎖的な空間で火を使えば駅員さん所か、私も男の子も酸素不足で窒息してしまう。
(どうすれば良いの……!)
こんな時、力のある男性か回復能力持ちがシーカー又はファインダーが居れば何とかなるかもしれない。
……居れば、何とかなる?
(そうか! 呼べば良いんだ!)
何で今まで気付かなかったんだろう。こういう時にこそ、文明の利器を最大限に生かさねば。
そう思い、鞄から携帯を取り出す。盾として振り回していたが、幸いにも携帯はヒビ一つ入っておらず、無事だった。これなら誰かと連絡が取れる。
(誰に掛けよう? 出来れば男性が良いんだけど……)
取り敢えず携帯を操作し、繋がるのを待つ。プルル……と言う電子音が、胸の鼓動を徐々に速くする。お願い、出て!
「にゃあ」
時間が止まった様な感覚。猫の鳴き声が改札の方から聞こえた。何の変哲も無い、可愛らしい猫撫で声。
改札口を見ると、50cmにも満たない小さな猫が行儀良く座っている。しかし、その姿に戦慄した。
「危ない!」
駅員さんの声が聞こえる。私は携帯を放り出して、男の子を庇う様に抱き締めた。
猫の武装は眩い光を放ちながら、突如爆発する。
爆風の中、頭を打った私は意識を失った。
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七夜(プロフ) - 更新完了しました (2018年5月5日 16時) (レス) id: 468c1cc159 (このIDを非表示/違反報告)
七夜(プロフ) - 更新しますね (2018年5月5日 16時) (レス) id: 468c1cc159 (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - すみません、書き込むの忘れてました。編集終了しました。 (2018年5月4日 16時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 編集します。 (2018年5月4日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 更新終わりました。 (2018年4月21日 19時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 x他9人 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年4月5日 22時