好きです、好きでした。【長月夜】 (ページ3)

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「今日、だね。」
「涙、頑張ろうな！」
「うん、頑張ろう。」

各々が好きなように過ごす待ち時間。
今日はライブ当日だ。どうやら客席は満員らしい。
その中にAがいないかな、なんて。

「夜、大丈夫か？」
「大丈夫です！海さん。ちょっと考え事してただけなので！」

心配かけたらいけない。ライブに支障が出るのは嫌だ。
そういえば……

「陽ってAと連絡とってるん……だよね？」
「おー。とってるぞ。因みに今日のことは何も言ってない。」
「だよねー……。」

これ以上陽に頼るのも良くない。自分で頑張ると決めたんだから。
それよりも今は目の前のライブを成功させるんだ。

＊＊

「皆お疲れ～。」
「お前はぜんっぜん疲れてなさそうだな。」
「やだなぁ海。僕だって疲れてるよ？まぁ客席に始が見えて疲れなんてふっとんだけどね！」
「結局疲れてないんじゃないか……。」

好きな人を人目見るだけで元気が有り余る……そんな経験あった気がする。
体育祭だったか何だか忘れたけど応援してくれてたAを見つけて、凄く元気が出た。
今でもそうなんだろうなぁ。Aを見ると疲れなんて吹っ飛びそうだ。

って俺は何を考えているんだろう。ここにAがいるわけない。
いるとしても俺を見に来たんじゃなくて陽とかを見に来たんだと思うし……。

「夜、疲れてる？」
「うん？あはは、大丈夫だよ。」

大丈夫だと言うことを伝える為に手をひらひらと降ってみせる。
疲れているけど、疲れてない。
ふわふわとした浮遊感。それが今は心地良い。

「陽、夜大丈夫なの？」
「あー、大丈夫だろ。ただの恋患い。」
「こい、わずらい……？」

陽と涙の話声も聞こえずにただただ現状に浸っている。
俺は自分が思う以上に脱力していた。

「こんにちはー。俺でーす。」
「ちょっと新ってば！？外出てから会おうって言ったよねっ！？」
「だってファンとか来始めたし。まぁ良いんだよ葵。俺たちが来た方が元気になる人もいるんだよ。」
「はーじーめー！！」
「……ほら。」

新の声と共に入って来たのはグラピの皆。
皆で来ていたのか。嬉しいような恥ずかしいような感じがする。

「夜ーお疲れだなー。」
「そうかな……自分ではよく分からないけど疲れてそうに見える？」
「疲れてるというよりは『考えてる』に見えるけど……。」

今来たばかりなのにすんなり当ててしまった葵は凄いと思う。
普段から人のことを考えてるからかな……。
その数時間後俺たちはツキノ寮に帰った。