Do not speak of it. ページ16
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目覚めは宿の狭く硬いシングルベッドの上だった。
がっちりエースに抱き締められ、緩やかな心臓の音、暖かい体温が伝わる。
こうして居るとメアは自分とエースの体温の差が有ることがよく分かった。
流石に目覚めが外ではない事にメアは安堵の表情を浮かべる。至るところにつけられたマーキングに猿轡の代わりにされていたトレードマークの目隠しが床に落ちている。
「(馬鹿力………)」
自分を抱き枕変わりにする手を払い退けてメアは起き上がる。
熟睡中のエースの願を見て、メアはシャワールームに向かう。
全裸なのだから脱げる手間が省け、シャワーの蛇口を捻れば暖かい湯気がシャワールームを包み込む。
裸体が映り込む鏡の表面に手を当てる。
丁度、メアの顔が映り込む部分だ。
顔大半を隠す黒い布切れを取り去ったメアの顔。
見れば見るほど、自分が誰の娘であるか、どんな人間の娘であるか、顔を見る度に父親の顔が浮かび上がり、堪らず鏡に温水をかけた。
私の父親は白ひげだ。
私の父親は最強の海賊だ。
私の父親は慈悲深い人だ。
私の父親はエドワード・ニューゲートだ。
もう、あんな男は父親じゃない。
鏡を見たくない。
思い出すのは叫びたい程に孤独な願だ。
目隠しを外したくない。
思い出すのは幼い頃の属望だ。
現実を直視すれば、飛び込むのは人の気も知らない身勝手な世間の意見。
誰も私を知ってくれない。
只、その考えは変わりつつある。
理解者が出来たのだ。
メアは冷ややかに笑う。
私がこんなにも幸せでいいのだろうか。
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作者名：神原瑞希 | 作成日時：2017年11月14日 18時
