ただ、傍にいるだけ。 2【忍足侑士】

By your side_84 ページ40

俺がここに転がり込んだのは単にAの生活に興味があったとかそんな理由で

別に勉強ができないなんてことはない

あちらこちらと忙しそうに動くAを眺めながらテキストの確認をしていると

どうしても、理解できない箇所が出てきた



「…何だこれ」

「何や、跡部」

「バツ付けてんじゃねぇか…わかんねぇの？」



馬鹿にするわけでもなく興味深そうに向日が問いかけてくるものだから正直に返した

すると、A以外の全員が俺のテキストを覗き込んで首を傾げた



「うーん、俺にはわからないな…と言うか、数学は無理」

「俺も分からへんわ…スマンな」



滝も忍足もお手上げらしい…となると、当然、宍戸達に出来るわけもない

自然と、俺達の視線は興味なさげに飲み物を飲んでいるAにいった



「尾前って学年トップだよな？跡部と同じ

出来たりしねぇ？」

「それいいね！解いてみてよ、尾前さん」

「……」


Aは俺達を睨みつけるだけで動こうとしない

その様子を見て、忍足がAに声を掛けた



「あぁ……Aやったら出来るんとちゃう？見てくれへん

そのために来たんやし…なっ？」

「………わかった」

「おおきに、えっと…これやわ」



仕方なさそうに近づいてきたAに問題を示すとAは特に悩む間もなく

近くにあった紙に書き始めた



「…単純な証明だね…まずは、ここと…この図形で…」



時折、俺の様子を確認しながらAは難なくそれを解き切って

俺に解法を書いた紙を差し出した



「…これで、満足？」

「あぁ、ありがとうな」



俺も、俺以外も全員、その解法に目がいきっぱなしで

Aが深く溜息を吐いたことには気づかなかった

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