憧れは憧れで終わるべき【d!】 (ページ1)

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「…ってか、月宮さんってほんとうざくない？

　可愛こぶってるっていうかさぁ〜…見てるだけでほんと腹立つわ。」

『…っえ、』

暖かい、春の日だった。

この学園に入学して一ヶ月が経とうとしていた。

新入生の歓迎会以来顔を合わせていない幼馴染の顔を思い浮かべながら瞬きを繰り返していた。

一ヶ月しか経っていないと言うのに圧倒的スクールカースト上位を誇る女子の会話。に、放り投げられた哀れな私だ。そんな私が、月宮A、スクールカースト底辺の哀れな陰キャだった。

根暗で不器用で、大して愛想も良くなくて、前髪覆われた目からは明らかな不細工オーラを醸し出すような私は引き立て役に最適だったし、今思えばそう思われて当たり前のことなのだが、

そんなに、はっきり言わなくていいじゃんか。

まぁ実際、本人たちは私の耳に入ることはないだろうと思っているのだから仕方がないのだが。

典型的な陰口。

今日は、部室の鍵を閉める担当で、かなり遅くまで学校から帰れなかったのが悪かったのだ。

一本の電話をかけようと、女子トイレでスマホをいじっていたら、これだ。

メイクを整えに来たのか、前髪を直しに来たのか知らないが、息を殺していれば、なかなか出ていかないくせに、自分の陰口まで叩かれた。

最悪だ。

なんて思いながら、ケラケラと爽快な笑い声を残して出ていった彼女たちが憎らしい。

電話をかける気にはなれなかった。

突然膝に力が入らなくなり、その場にしゃがんだ。

半泣きで個室を出て、そそくさと女子トイレを出ていった。

廊下を出て、スマホを鞄に仕舞う。

瞬間、やけに煩く聞こえる電話の着信音。

即座に音量を下げて、横の壁に倒れ込んだ。

電話を切る気力も無い。電話に出る気力も無い。何もかもが消失したふらふらな状態で、これ以上人間関係が崩れるのは嫌で、電話に出た。

『どう、したの。』

「ん？なんか元気無いなぁ。どうしたん？」

『…いや、そんなことないけどさ。

　…で、何の用なのかな？』

「いやぁ、ほんまにくだらないことやねんけど、ノート写させてくれへん？」

『…はぁ。今月何回目なん？いい加減ちゃんとしなよ…』

「まぁええやん！俺とAの仲やろ？」

『そんなんだから不人気なんだよ…、、、』

「あ？聞き捨てならんぞ。」

『いや、事実しか言ってないって…』

＊