始めよう ページ49
「みんな、いらっしゃーい!」
「お邪魔します」
会場の準備が整った頃。志歩達の呼びに行った雫と、司に連れられてやって来た冬弥が部屋に入ってくる。
テーブルの上には沢山の料理とお菓子が並び、部屋の中は飾り付けが施されていて、まるで誕生日会のような様相になっていた。
「まあ、素敵な飾り付けね! ところで、Aちゃんはどこにいるのかしら?」
雫がきょろきょろと室内を見回すと、賑やかさを聞きつけたAがひょっこりと顔を出す。
「みんな、来てくれてありがとう……!」
「さて、これで全員揃ったようだし……さっそく始めようではないか!」
司が音頭を取ると皆ジュースを手に持ち、それを掲げる。
「Aの帰還および退院を祝して――乾杯!!」
「かんぱーいっ!!」
カチンッ、という音と共に、Aは改めてこの場にいる仲間達に感謝する。
こんなにも素晴らしい友人に出逢えたこと。そして、こうして自分の帰りを待ってくれていたこと。その全てが嬉しくて、心の底から幸せだと思えた。
それからしばらく、会話は盛り上がりを見せる。入院中にあった出来事の話だったり、今打ち込んでいることについてだったり。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、宴もたけなわとなった時。
「それでねその時、しぃちゃんがね……」
「オレの言葉を聞いて、咲希がだな……」
Aはシスコン二人に挟まれ、延々と二人の妹の話を聞いていた。ちなみに妹本人達は気にもとめずに音楽の話に夢中になっている。
やはり少し肩身の狭い思いをしながら、Aがジュースをちびちび飲んでいた時。
「あ、あのっ!!」
立ち上がったのは、一歌だった。
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作者名:あきいろ | 作成日時:2022年9月18日 8時