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本望だった ページ31

「――くん、……さくん! 司くーん!」


聞き慣れた声で名前を呼ばれて、ハッとする。
目の前にいたのは、見知った顔の少女。


「……、すまんえむ、少しぼーっとしていた」

「面会時間だって! 類くんと寧々ちゃんもう行っちゃったよ?」

「そうか、すぐ行く」


司達が訪れていたのは、都内にある総合病院だった。
あの後、慢性的な頭痛が回復したAは東京へ帰ることになったが、念の為検査入院することになったのだ。


「……多分司とえむなら、すぐ来ると思います――あ、なにしてんの二人とも」

「お前らが置いて行くからだろ……」


病室に足を踏み入れるなり呆れ顔をする寧々に不服そうな視線を向けてから、ベッドの上を見遣る。
そこには穏やかな笑みを浮かべるAの姿があった。


「天馬くんも鳳さんも、来てくれてありがとうございます」

「うん! Aちゃん、あたし達がいない間病院に一人で寂しくない?」

「平気ですよ。病院の人に頂いた本を読んだりしてるので」

「へー! どんな本?」

「これですー」

「わ〜ムズかしそうだけど面白そう! あ、そうだ! ショーの話してあげるね! このご本とちょっと似てるかもなんだけど――」


えむと楽しそうに話す彼女を見て、司は安堵する。
どうやらすっかり元気になったようだ。
……安心しつつも、どこか虚しさを覚える。


「……司くん。気持ちはわかるけれど、こうしてAくんは助かったんだ。これが“彼女”の本望だった。必要以上に気にすることじゃないだろう」

「……わかっている」


司の肩に手を置きながら諭してくる類の言うことはもっともだ。しかし、そう簡単に割り切れるものではないのだ。

あれだけ大切に想っていた彼女を、自分の創り出した偽物と言えど、自らの手で消したという事実は。


「わたしも、あっちのAとの距離感の方が接しやすかったから、リセットされたみたいでちょっと……残念」

「Aくんとしての中身や人柄は変わらないんだから、寧々がどうにかするものだと思うよ」

「……頑張ってみる」


そう話す類と寧々の表情からも、どこか寂寥とした雰囲気を感じ取れた。

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設定タグ:プロセカ , 天馬司 , ワンダーランズ×ショウタイム   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:あきいろ | 作成日時:2022年9月18日 8時

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