全て君に ページ24
「お前達!! 今日はこの地で行う最後の公演だ。フェニックスワンダーランドの宣伝大使の名に恥じぬよう、全身全霊を込めてショーを行うぞ!!」
「やるぞー!」
座長である司の声に合わせて、えむが元気よく右手を突き上げる。
明らかに昨日とテンションが違うんだけど……と寧々が小さく零す横では、類が何かを考え込むような素振りを見せていた。
「……どうかした? 類」
「ああいや――このショーを見て、Aくんが記憶を取り戻してくれればと思ってね。まぁ、そう簡単にいくとは思っていないけれど」
「だからわざわざ、司がいつもの三割増しで目立つ脚本にしたんだ……」
納得がいったように息を吐くと、類が目を細めた。
その視線の先を辿ってみれば、そこには台本を握りしめたまま、何やらぶつくさと独り言を漏らしている司の姿があった。
――全て君にかかってるんだから、しっかり頼むよ。
そんなこんなで、ワンダーランズ×ショータイムの公演が始まった。
最初のシーン。司は演技に集中しながらも、客席の中にAの姿を探していた。
ちょうど台詞を言い終えて舞台袖に引く辺りで、右側の壁沿いにその影を見つけた。房江と二人で来たようだ。
壇上で行われるえむと寧々の掛け合いを見守りながら、Aの様子を窺った。
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作者名:あきいろ | 作成日時:2022年9月18日 8時